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連載コラム

第29回「休日にはちょい外へ!」 若葉ケヤキモールが周辺住民の暮らしを変える!

[ 2006年5月10日 ]

 キャリア・マム事務所のある多摩センターより、さらに西へ3駅、都心から離れたところに「多摩境」という駅がある。ほんの10年前までは、なんにもない駅だった。それが「アカチャンホンポ」「ベビーザらス」「カインズホーム」「コストコ」などの大規模&格安店舗が続々と登場。「今では週末になると、渋滞が起きるほど賑やかになってきた」という情報は、かねてよりあった。 いくつかの商業施設の出現が、住民のライフスタイルまで左右することがあるんだな、ということを多摩境の繁盛ぶりを見るたびに感じていたのだ。


●自転車パラダイス・若葉ケヤキモールは、ご近所相手のおしゃれなスポット!

 ここにきて、「なんか立川にも新しいスポットができたらしいよ。今までは人のいなかった場所が大繁盛しているみたい」との情報が舞い込んだ。
 そこは、立川市けやき台団地に隣接している“若葉ケヤキモール”! 夫の実家がこの近くにあったため、以前から知っている地区だが、はっきりいって古い公団住宅、かつては子どもが多かったのだろうけれど、今は高齢化が進む一方! という場所だ。団地内の商店街は当然さびれきっている。

 そんな街だったのだが、そこに「ショッピングモール」だとぉ? 心の中に「だれがくるんだよ?」という疑問がわきあがったが、この際「自分の目で見てみようじゃないの」と出かけてみることにした。帰りに姑のところに寄れば、嫁としての点数稼ぎもできるしねっ!

 立川の団地内の道路は狭い。多摩ニュータウンのように片側二車線になっているところなど、ほとんどない。そこに突如、ショッピングモールだ。日曜はさすがに駐車場待ちの列ができていた。ただ、道路が狭いので「この立地は、まずいんじゃないか」と思わず心配になってはみたが、モール内を歩いてみて謎は解けた。

 約300台収容の駐車場はあるものの、このモールは「自転車客ウェルカム!」なのだ。そりゃ、週末くらいは遠くから車で来る客も期待しているだろうが、普段は自転車圏内のお客をターゲットにしていることがわかる。
 なんせ自転車置き場がすばらしい。風が直接当たらないように一段低い位置に、きちんとタイヤ留めのある置き場が設置されているのだ。このタイヤ留めのおかげで、無秩序に自転車が並べられることはないだろう。さらに風の直撃を受けにくいので、ドミノ倒しのように自転車がなぎ倒されることもなさそうだ。
 自転車客にやさしい、それが“若葉ケヤキモール”の売りであり、23店舗入っているショップのラインナップもそんな感じだ。


●近隣住民がターゲット! 立川の「食」文化が変わるかも!?

 なんといっても、洋服を売っている店が少ない! 23店舗あるのに、たったの2つだ。ランジェリーショップを入れて、かろうじて3店舗。こじんまりしたモールとはいえ、これは特筆すべき少なさではないか。
 しかし、私が行った日曜午後の客層を見ていると、そのセレクトには納得がいく。もっとも、混んでいる状態だろう日曜の午後でも、中心はファミリー層。それも、おじいちゃん、おばあちゃんを含むだったりする。
 ファッションにお金と情熱を注ぎそうな独身女性風な人の姿は、本当に少なかった。そりゃそうだよな。そういう人なら、とりあえず立川駅周辺までは出るだろう。いや、都心にだって出て行くか・・・。

 その一方で、食べ物関係はかなり充実しているのが“若葉ケヤキモール”だ。
 1階でもっとも繁盛していたのは(行列ができてた!)、スティックケーキの「スティック・スイーツ・ファクトリー」、その隣には都心でも人気だという、大理石の上でジェラートとフルーツをミキシングしてくれるデザートショップ「ジェラフル ソロウーノ」。こだわりのベーカリー「ムッシュイワン」や、コーヒー豆と輸入食品の店「カルディコーヒーファーム/カフェ カルディーノ」も世界中の食材が集まっていて、見ているだけでも楽しい店だ。
 もちろん、大型スーパーもある。マルエツ系のちょっと高級感あるスーパー「LINCOS(リンコス)」だが、ここもなかなかスグレモノなスーパーだ。なんてたって、入口で焼きイモを売ってるんだもん。いやいや、もちろんそれだけではなく、ワインだのチーズだの、ちょっとこじゃれたものが充実しているし、総菜もなかなかグルメ感漂うラインナップで、デパ地下テイストを感じさせてくれるのだ。

 “若葉ケヤキモール”は、日曜のブランチに、または、お客さんが来たときに、ちょっとシャレたお茶菓子を買いに、休日の夜くらいは少しだけ贅沢な食卓に、そんなニーズにはしっかりと応えてくれるのではないかと思えた。

 2階の飲食エリアには「コクテル堂コーヒー(カフェ)」「かつき亭(とんかつ)」「墨花居(中華)」「シェフズVバイキング(ベジタブルレストラン)」と4つの飲食店が入っている。ものすごく多いわけではないが、モール自体の規模を考えたら、なかなか力の入ったラインナップである。
 このエリアは、おそらく平日のランチタイムには近隣の主婦で賑わっているのではないかと想像できる。日曜だけでなく、平日にも「ちょっとあそこまで(近くだしね)」という感覚で出かけられる、こぶりなショッピングモール、それがこの“若葉ケヤキモール”なのだと思う。

 雑貨屋、手芸品店、書店、旅行代理店、美容院、リラクゼーションサロンなどもあり、近所にかわいいものを売ってる店があれば、のぞいてみたいだろう小中学生や、休日にのんびりしたいお父さんたちなどにも「寄ってみようか」と思わせるところは、しっかり押さえている。日曜にけやき台のおばあちゃん家に遊びに来た息子夫婦と子どもたちを連れて行くには、なかなかなスポットじゃないだろうか。歩いてだって行けるしね。

 


●お出かけしなかった人が、お出かけするようになる・・・そんな変化が期待できるLSC(ライフスタイルセンター)に

 それでも、今までは日曜日に買い物に行くとしたら、立川駅までバスや車で出かけなければならなかった周辺団地の人々に、自転車で気軽に出かけられるおしゃれな“若葉ケヤキモール”ができたという効果は大きいだろう。今までなら出かけなかった人だって「ちょっと」腰をあげることもあるだろう。
 「日曜は家でのんびり」から「日曜には自転車でおでかけ!」そんなライフスタイルの変換も引き起こすポテンシャルを“若葉ケヤキモール”には感じた。

 実はこの“若葉ケヤキモール”、米国では定着している業態ではあるが、日本では数少ないLSC(ライフスタイルセンター)なのだそうである(日経流通新聞MJ:2006.4.19号)。
 そういわれれば、今までのショッピングセンターのパワーテナントといわれていたフランフランや、サザビーなどのセレクトショップが、決して背伸びはせずに集まったという感じがある。
 もともと、高島屋の流通センター跡だというが、向かいの花屋とのマッチングといい、「ここしかないだろう」っていうぐらいの立地条件にもみえる。
 ファミリーやカップルという若者も巻き込んだ、「誰かと一緒にお買い物」が楽しくなる、あなたの暮らしを提案するLSC。今後も、全国各地に着実に広がっていくのではないだろうか。
 立川の“若葉ケヤキモール”のように、高齢者が多く、従来ならば商圏としては見捨てられていただろう場所に果敢に出店し、若者をも引き込むような仕掛けをすることは、これからのニッポンには切実に求められているはず、だ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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