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連載コラム

第5回「コンビニに負けるな? 深夜営業のスーパー増殖中!」〜「スーパーとしてのクオリティ維持」と「コンビニエンス追究」の狭間で、各店が試行錯誤中〜

[ 2004年4月30日 ]

●「23時まで営業」はもう当たり前! 24時間スーパーも登場
 南大沢駅前のイトーヨーカドーが23時までになったと騒いでいたのは、つい最近のことだったと思うのだが、今や、「23時まで」のスーパーは珍しくなくなってきた。多摩ニュータウン内だけでも、24時までやっている三徳南大沢店、24時間営業のセイフー多摩店なんてのも登場! 千歳烏山の西友が24時間営業しているというので驚いていたが、都心のみならず郊外のそれも永山団地の中なんて立地での24時間営業とは、びっくりだ。

 あっという間に広がったスーパー深夜営業の波だが、今回、取り上げようとしたところは、思った以上に取材は難航してしまった。なんと! 取材許可がおりないのだ。スーパーとしては「ぜひぜひ深夜もやっていると宣伝してください」ともろ手を挙げて歓迎されるかと思いきや! いわく「遅い時間に取材に来られても対応できない」「深夜帯の店内写真はちょっと......」とひどくおよび腰なのだった。

 しからば仕方あるまい! と今回は、覆面取材を敢行することになった。いったい、深夜のスーパーはどうなっているのだろうか?

 


●大繁盛! 駅前スーパーの深夜帯

 駅の真横にある大型スーパーの21時すぎを観察しに行ってみた。まず、駅の改札前に立って、駅から出てくる人を観察。21時すぎてもベッドタウンであるこの街に電車から降りてくる人は多い。そして、なんとその半数くらいが駅前スーパーに吸い込まれていくのだ。改札を抜けて右がスーパー、左にはコンビニがあるのだが、明らかに右に進む人が多い。そして、そのほとんどがスーパーに入っていくではないか! このスーパーが21時で閉店していたころは、寄るとしてもコンビニ、もしくはまっすぐ家に帰っただろう人達なのに、駅前のスーパーが開いていれば、半分が立ち寄るということには驚きを覚えた。これを見たら「開けない手はない」と思うわな、普通は。

 こと女性は、8割はスーパーに立ち寄ると言ってもいいくらい高い確率で入って行った。さて、あまりの集客ぶりに驚きつつ、店内に入ってみたが、非常に広い店のため、ちょっとさびしい感じがする。深夜帯としてはかなりお客が入っているほうの店だと思うが、人口密度からすればこんなものか、という感じだ。さらに、さびしいのは店内のショーケース。鮮魚、精肉のコーナーなどは半分近くが空になっている。

 並んでいる商品を見ると、かつて遅い時間のスーパーの専売特許だった「半額」「見切り品」などのシールが貼られているものが案外少ない。加工時間を見るとかなり遅い時間で、まだまだ「見切り品」というには新鮮なのだ。ショーケース全体のすき具合を見てしまうと、そこにある商品は「残り物」のように見えてしまう(それが、店側が写真を撮らせたがらない原因かとも思う)。しかし、21時以降に来店する人の中にも「少しでも新鮮なものを」と望む人だっている。そこに対応するために、おそらく売れ筋と思われる商品は、遅い時間に加工して深夜帯に備えているのだろう。そのため、予想したよりは激安品は少なかった。閉店までに売り切りが基本だろうそうざいコーナーを見ても、いちばん引いているもので「200円引き」(元値が498円)、半額になっていたのは麺類くらいだった。唐揚げやコロッケなどは、最後まで「50円引き」にしかならなかった。遅い時間のスーパーに行けば格安でおそうざいが買える......という節約術はスーパーの営業時間が延びたことによって、過去のものになりつつあるのかもしれない。

 このスーパーでは、17台あるレジのうち、21時以降に稼動していたのは5台。どのレジも3〜4人も並んでいて混んでいる。レジの稼動数もお客の入りを見ながら試行錯誤という状態のようだ。また、若者客の多さも深夜帯の特徴と言えそうだ。学校や塾帰りの中高校生、大学生のグループなど従来はコンビニの顧客層だったと思われる人達が、けっこういるのが深夜のスーパーだ。昼や夕方は主婦が多くて近寄りがたいスーパーも、深夜になれば若者にも魅力的な場所になるのだろうか。

 22時30分ころ、もう一度、駅の改札を見てみた。この時間になっても、電車からはきだされる人のやはり50%くらいがスーパーに吸い込まれていった。閉店30分前になっても、おそうざいが半額にならない理由がわかった気がした。この時間でもこれだけお客が入ってくるのなら、なにも値引きして早々と売り切ってしまう必要はないのだ。

 


●ちょっとさびしい郊外店。でも、「お買い得品」は見逃せない!

 23時すぎてから、24時まで開いている住宅地にあるスーパーに行ってみた。駐車場はがらんとしていて、私の車を入れて4台。店に出入りする人の姿ゼロ。でも、店の明かりはついている。おそるおそる入ってみたところ、ちゃんと営業はしていた。が、本当にさびしい。お客も従業員もぽつりぽつりとしかいない。こちらでもショーケースはかなりさびしい状態だった。

 やはり、深夜帯にまで「欠品なし」というわけにはいくらスーパーでもいかないのだ。もちろん、それはそれでよいと思う。深夜に行ってもすべての商品がそろっている状態を維持するためには、多くの廃棄物が出るだろうことくらいは消費者にもわかるのだから。一見さびしく見えても、見込めるお客の数に合わせた程度に商品が過不足なくそろっていれば、深夜のスーパーとしては十分役割を果たしているのだから。

 やはり住宅地の店は、深夜帯に出入りするお客の数が駅前に比べてとても少ない。そのせいか、消費期限が迫っている商品の値引き率はちょっとすごい! あと2時間で食べないとまずい! といういかの刺身などはなんと80%引きだった。でも、なんせ23時である。残業帰りのサラリーマンだったら、この刺身を買って帰ってすぐに晩酌すれば、十分消費期限内に食べられる。80%引きはすごいよ!

 そうざい類も比較的安い。とくに「焼きいも」は午後8時製造のものも23時ですでに半額になっていた(買いそうになった)。やはり入るお客が少なければ、とにかく来てくれた人に買ってもらわなければならない。この先の時間であと何人お客が来るか心もとない。そんな切実さが値引きシールからうかがうことができた。

 これが、いっそのこと24時間なら、多くはないだろうが、2時、3時に売れる可能性もあるが、24時で閉まるとなれば、22時、23時の時点で売れてないものはかなりの値引きをしても売り切りたいに違いない。営業時間延長で姿を消したかに見えた「閉店前の大値引き」は、住宅地の深夜スーパーでは生きていた。


●「夜でも開いているスーパー」から「夜もがんばっているスーパー」に。

 「21時過ぎたらコンビニしかない」時代ではもはやない。22時でも23時でも、店によっては2時、3時でもスーパーでおそうざいが買えるし、刺身も買える、そんな時代になったのだ。一度、時間延長してしまったスーパーはおそらくこのまま深夜営業化していくのだろう。

 ただ、現状の深夜帯のスーパーは、「残り物を売っているように見せたくない」という理想と「昼ほどの集客があるわけではないから、昼と同じようにはできない」という現実の間で揺れているように見える。もちろん、昼と同じだけのサービス、商品の豊富さを深夜スーパーに求めるのは酷だろう。しかし、昼と同じではなくても、「夜に来ればお得!」「夜にはこんなサービスもある」という特色を出していくこと、また、深夜帯の生鮮品の商品をしぼり込むのはもちろんいいとして、空のショーケースをいかにも「がらん」と見えるままにしておくのではない工夫をする。「深夜帯は商品少ないわね」と思わせない売り方、陳列の仕方をする。そんな改善の余地はまだまだあるように思われた。

 今はとにかく「開いていてよかった!」と思える。スーパーがこんな時間にもやっているというだけで価値がある。しかし、これからますます競争は厳しくなり、コンビニもスーパー化していくだろう(おそうざいの充実、低価格化など)。そうなったときに生き抜いていくには、「夜に行くならあのスーパー」と選ばれるようになること、が不可欠だろう。

 今回行ってみたあるスーパーは、「夜間店長」というシステムを採用していた。実際のところ、これだけ営業時間が長くなると、1人の店長がずっと見るのは不可能というのが実情かもしれない。が、「夜間店長」という名札をつけたベテラン風の社員がいることによって、「夜間もきちんとやっていこうとしている」という姿勢を印象づけることはできると思う。「夜もやっている」だけでなく「夜もがんばっている!」そんなスーパーが増えるように、健闘を祈りつつ、見守りたいものだ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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