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連載コラム

第7回「やーっぱギフトはグルメでしょ!」な主婦の心をわしづかみ〜伊勢丹立川店ギフトセンターは「食のテーマパーク」だ!

[ 2004年7月1日 ]

カラフルなゲートで区切られた異次元空間
●「立川の伊勢丹があるから新宿までは行かない」と多摩住民に言わしめる吸引力の秘密を探る!

 買い物は近所のスーパー、ディスカウントショップなどですませてしまうことが増えた昨今でも、「やはりデパートで」という気分になるのが夏のお中元、冬のお歳暮のギフトシーズン! かつては多摩地区からでも「ギフトだけは」と都心のデパートに買い物に出かけて行く人も少なくなかった。

 しかし、ここ数年、多摩地区の住民はめっきり都心へ出かけなくなっているという。それは「立川に伊勢丹があるから」と断言する主婦は少なくない。立川駅前の伊勢丹は、なぜそんなに支持されているのか? お中元商戦のまっただ中のある日、リサーチに行ってみた。

 まずは、7階にあるお中元ギフトセンターに直行してみる。エスカレーターを降りると目の前に、赤と白を基調にしたフランス風な色使いのゲートで仕切られたコーナーが広がっていた。

 


 入口のゲートまわりには、「吉兆」のそうめんとだしつゆのセット、近江牛の西京味噌漬けなど、「おいしそ〜」ではあるが、「うわ〜〜、自分ではちょっと買えない」なお値段のグルメ商品が並んでいる。入口から右手に進むと、和菓子の名店「鶴屋吉信」などの水ようかん、くずきり、水まんじゅうなど、涼味あふれるラインナップ! ぐるりと、ギフトセンター内を回ってみても、目につくのはフレッシュフル―ツ、洋菓子、ハム、ソーセージ、麺類、海産物など、ギフトとしてはおなじみのモノばかりだが、どれも「うわ、この店のなら食べてみたい!」と思わせるグルメの王道をいく品ばかりなのだ。

 自宅用には、当然買えない。だけど、贈り物にはいいかな。こんなのもらったら自分だったらうれしいな。そう思えるものばかりだ。それも、「どうせ使うものだからもらえれば助かる」というサラダ油、洗剤のような実用品ではなく、ちょっと贅沢な気分を味わえる「非日常的」な商品が、受け取る人にサプライズと歓びを与えてくれる、そんなギフトそろいなのだ。もちろん、定番の洗剤やサラダ油だって置いている。しかし、ギフトセンター内での存在感はきわめて薄い。伊勢丹立川店のギフトセンターは、まるで「食のテーマパーク」のように、グルメ気分を盛り上げてくれる異空間なのだった。

 


●「実用品がよければ、デパートでは買わない」層をメインにしたラインナップ

 実は、ほかのデパートもいくつかのぞいてみた。展示されている品数はどこも遜色ないし、銀行カウンターのような承り所など、ギフトセンターは似たような造りになっているところが多い。しかし、ここ数年の不況による虚礼廃止の影響も大きいのか、意外と閑散とした印象のギフトセンターも多かった。ディスプレイの仕方も、いわゆる「催し会場」と隣接して商品が並んでいる・・・という感じ。いちばん目立つ通路側にレイアウトされているのがナショナルブランドのビールとジュースの詰め合わせや、洗剤詰め合わせだったりして、実用的ではあるが、華やぎに欠ける、そんなギフトセンターになっているデパートもあった。

 正直言って、実用品をギフトにするのなら、ディスカウントストアや生協などのほうが安い。デパートの包み紙ということにこだわる人もいるだろうが、「もらうなら実用品がいいわ」という層にはおそらくそういうこだわりは少ないだろう。「デパートの包み紙」でギフトが届くことに歓びを感じる人をより喜ばせるのは、やはり「デパートだから売ってる」「伊勢丹だから買えた」という希少価値のある品であり、「食べる」ことがイベントにもなり得る非日常性のある食品だったりするのではないか。<ノービル・ドルーバ>のオリーブオイル(500ml)7,350円、<吉泉>のうなぎかば焼き(1.4kg)9,450円、<伊勢せきや>の活あわび姿煮(0.6kg)10,500円、<辻留>そうめん詰め合わせ(3.0kg)6,300円・・・いずれも安くはない。しかし、もらえば確実にうれしいもの! きっと幸せな気分になれるもの! 「ギフト」本来の目的に最適な品物が、伊勢丹の包み紙で届く。年に2回だけの贅沢なら、そこまでしたい、そんな気分を盛り上げる効果が感じられるのが伊勢丹のギフトセンターなのだ。


●立川にあっても「さすが伊勢丹!」を貫徹!

 また、どこのデパートでも「●●円以上お買い上げのお客様先着●●名」へのプレゼント、お買い上げ金額による抽選でのプレゼントなどを実施していたが、伊勢丹が先着20,000名に配っていた粗品の「オリジナルトートバッグ」(注:1)は、5,250円以上の買い物でもらえる。他デパートでは10,000円以上の買い物をしないと粗品がもらえないところもあり、ここでも伊勢丹に軍配が。おまけに、お買い上げ金額に応じての抽選会(注:2)の賞品も伊勢丹は「有名旅館ペア宿泊券」「東京ディズニーリゾートペアパスポート」と非常に気がきいている。なるほど、多摩地区の主婦から支持されるわけである。

 しかし、この伊勢丹立川店のがんばりは、「伊勢丹だから」なのか「郊外店だから」なのかそこがちょっと気になって、都心、神奈川、千葉に住んでいるスタッフに地元デパートの中元商戦についてリサーチしてもらった。その結果、郊外店は、顧客獲得を目指した接客中心で、試食などもやっているところが多いが、扱っているのはメーカー品がほとんど。インターネットに慣れてきた主婦ならわざわざ店頭に足を運ぶ必要がなくなってきている、という印象が多く報告された。「インターネットで買い物なんて」という年配の方には、郊外のデパートもまだまだ魅力かもしれないが、若い世代にとってはどうか? 都心はリピート客主体で店員の配置は少なめという合理的な方法をとっているところが多い。しかし、これもいくら前年の顧客データや送り先のデータがあるとはいっても、どうせ毎年、同じ商品を同じ相手に送るのなら、自宅からインターネットで注文すればこと足りる日は近いだろう。

 となると、やはり、主婦が「お中元シーズンだから」とデパートに足を運ぶのは、「いつもとは違うもの」を求める場合だけ。そして、その欲求に応え得る可能性が高いのがグルメ! であるという結論に達した。まさに伊勢丹の徹底したグルメ戦略は都心、郊外とわず他店とは一線を画しており、主婦のスイートスポットに当たっていると言える。

 ちなみに、ギフトシーズンではなくても、伊勢丹立川店は、とくに若年層主婦に人気の高いブランド、ショップが多く、まさに「都心に行く必要がなくなった」と言わしめるデパートとなっている。1階のアフタヌーンティー、アニエスベーなどは、平日の昼間でも若者や主婦(ベビーカーの人も多い)などで賑わっている。立川駅から至近という立地のよさもあり、驚くべき求心力を発揮している伊勢丹立川店の魅力は、「さすが伊勢丹!」と言わせる品揃え、店舗イメージをたとえ立川でも(!)手抜きなしに貫いているところではないか。徹底したグルメ志向のギフトセンターの異次元ぶりにそんな思いを強くしたのだった。

(注1:オリジナルトートバックプレゼントは2004年7月初旬で終了)
(注2:抽選会は2004年6月25日に終了)

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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