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連載コラム

第10回「癒し」の空間にお金を払う! そんな人々が増殖中! 〜マッサージなどの施術だけでなく、雰囲気や会話でも癒されるサロンが静かな人気!〜

[ 2004年10月4日 ]

●「QUASYS橋本店」での極楽体験
 神奈川県のJR橋本駅前のテナントビル「ミウィ橋本」の3階にある「QUASYS(クアシス)」は、ミウィ橋本を利用する機会のある私たちのスタッフ内で、ちょっと気になる存在だった。店の外観は美容院風。しかし、その商品はというと「Back Refresh」と「Foot Refresh」…なんだそれ? という疑問は、その店内に配置された独特の椅子を見てますます膨れ上がっていた。歯医者さんの椅子とはちょっと違うのだけど、なんだか歯医者さんの椅子にも似た「これ、どうやって座るの?」という不思議な形の椅子が、美容院さながらに並んでいる様はちょっと奇妙ですらある。今回はその謎を解明すべく、スタッフの1人が「QUASYS」に潜入取材を敢行した。

 実は、この椅子がこの店の特徴であり、ウリ! この椅子に座り、上半身を椅子にもたれかけさせた状態で、腰、背中、肩をもみほぐしてもらうのが「Back Refresh」なのだ。文字通り、背面のリフレッシュコースなのだが、この椅子のおかげで、靴を脱いで横にならずにすむし、ベッドで横になるわけではないから、化粧も落ちない。女性が、ちょっとした時間で気軽に身体をリフレッシュさせることができる魔法の椅子なのだ。しかも特許も取得している!! この椅子、見た目はちょっと変わっているが、座り心地は悪くない。コースが始まる前に、上半身を楽にもたれかけさせただけでも、かなりリラックスできる。その状態で、腰ぐりぐり、肩もみもみ、背中ぐいーっとやってもらうと、そりゃあもう極楽極楽。パソコンなどに向かう時間が長く、肩がこりやすい、背中ががちがちになるという人は、絶対に一度体験してみてほしい心地よさなのである。

 店内の奥には、見るからに座り心地のよさそうなゆったりした椅子があり、こちらは「Foot Refresh」のコーナーになっている。椅子に深く腰かけて、スタッフが用意してくれた台に足を乗せると、スタッフが足をオイルトリートメントしてくれる。ていねいに、やさしく、ときには心地よい痛みもあり、まさに足先から疲れがほぐれて消えていくような感覚を味わえる。第一、普段は人から膝まづかれることなんてないから、思わずお姫さまになったような気分も味わえてしまう。この「Foot Refresh」と「Back Refresh」は、どちらも15分コース1,575円からあり、たとえば「Foot15分+Back15分=3,150円」のように、その日の自分の疲れ加減や予算によって、自由な組み合わせでオーダーできるのだ。15分というと短いようだが、これがなかなか。いざやってみるとけっこう長い時間である。両足やってもらっても、15分間あれば十分にほぐされて、心地よくなることができる。

 

 


●会話のあるなしが、リラックス効果に影響する?

 「QUASYS」でのリラクゼーション体験ですっかり気をよくしたわがスタッフは、「やはりこれからはリラクゼーションにお金を払う時代よ」と、数日後に、某スーパー内にあるクイックマッサージに出かけて行った。こちらも「15分1,500円」と値段は同じ。もんでもらう場所は「身体」と「足」を自由に選べて、「身体15分+足15分」などと組み合わせられるシステムも同じである。こちらもなかなかの技術で、しっかり肩も腰ももみほぐしてくれて、15分間でも十分なリフレッシュにはなったけれど、「な〜んかリフレッシュはするけど、リラックスはできなかった」というのが体験したスタッフの率直な感想だった。

 店にもよるだろうが、一般的に「クイックマッサージ」では、やはり靴を脱いでベットでうつぶせになり、マッサージを行う所が多いようだ。うつぶせなので、ほとんど会話はできずただ黙々とマッサージをされるのみである。ときどき、「うっ」とかそういう声をあげるのがせいぜい。その点、「QUASYS」は、「Back Refresh」「Foot Refresh」ともに、スタッフとの会話が存在するのだ。そう、ちょうど美容院のように。

 それは、椅子の形状にもよるところも大きいが、やはり「QUASYS」のようなタイプのリラクゼーションショップのポリシーによるものだろう。「病院で治療をする」感覚ではなく、「美容院に出かける」感覚で、心身のリラックスを手に入れる。そんなショップが、今、女性たちに支持されてきているのではないか。


●「身体を癒したい」は、万人共通の願い

 「肩がこる」「足がむくむ」そんな症状を緩和するだけなら、今は、性能のいいマッサージ機、マッサージチェアもたくさん販売されている。1回で何千円も払うのなら、マッサージチェアを買って家で毎日使ったほうが安上がりかもしれない。だけど、そこは人間なのだ。こったところをもんでもらう、ほぐしてもらうだけでなく、心も癒されたい。「今日は自分にごほうび」という気分を味わいたいのだ。日頃の生活にストレスが多ければなおさらのことだ。

 そんなニーズに応えてくれるのが以前から街中にあったマッサージや、やや殺風景な雰囲気のクイックマッサージではなく、リラクゼーションショップという存在なのではないだろうか。最近は、クイックマッサージでも、横にならずにすむ形態の店なども増えていて人気のようだが、たしかに、「靴を脱がずにすむ」「髪や化粧が乱れない」などとということで気軽さはおおいに増し、より身近なものとなるに違いない。しかし、やはり、「座ったまま、靴を脱がずに」だけでなく、実は、店内の照明やインテリア、スタッフの雰囲気などによりおしゃれでくつろげるイメージを演出することが重要なのだと思う。美容院のような外観、さらに「QUASYS橋本店」ではネイルもメニューに取り入れており、リラックスついでにネイルのお手入れ、ドレスアップもできるようになっている。そうするうちに、さらに、スタッフとのコミュニケーションも楽しむことができる。まさに「疲れをとる」「こりをほぐす」というレベルではなく、「いい気分を手に入れられる」のがリラクゼーションショップの位置付けなのだ。

 このことが、より多くの人に知られてくれば、仕事帰りに、または日曜に買い物に出てきたときに、「ちょっと寄りたい」店として、こういったリラクゼーションショップは、今後、ますます注目度上昇してくるに違いない。また、「QUASYS橋本店」のようにテナントビルやデパートの中に出店することで、無関心層の目にも触れる機会を増やすことで「リラクゼーション」への関心を高めることもできるだろう。リフレッシュして身も心も軽やかになってさらに何か買い物をしてしまう、という効果も期待できるかも。テナント全体の売上アップにも一役買う可能性はおおいにありそうだ。

 頻繁なエステや美容院通いは、「きれいになりたい」という欲から離れてしまった女性には「お金の無駄」に思えるが、身体を癒したい、楽になりたい、という願望はだれもがもっている。そのためにならお金を払うという女性は「美しさのためならお金を惜しまない」女性よりも、広範囲にわたって存在するところが、リラクゼーションショップの強みとも言えるだろう。高齢化が進み「おしゃれに関心のあるピチピチした若い女性」は減っていっても、身体を癒したい女性はきっと増えていく。そのとき、リラクゼーションショップは今以上に一般的なものになっているのではないか。

 こりや疲れをもみほぐすという点だけ見れば、クイックマッサージもリラクゼーションショップも大きな違いはないのだろうが、美容院感覚の造りという演出がまず違う。そこが女性の感覚にうまくフィットし、これから人気が高まっていきそうな気がしてならない。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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