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連載コラム

第16回「母の夢と野望をしょって? 踊る子どもたちが増殖中!」

[ 2005年4月11日 ]

●子ども向けのダンス教室、種類も数も増加の一途
 今やちょっと大きな町ならカルチャーセンターくらいはたいていある。また、スポーツジムもある町が多い。そんなカルチャーセンター、スポーツジムにもこのところめきめきと子どもを対象にしたダンス教室が増えているようだ。

 ひと口に「ダンス」といっても、またその種類が多様化していて、伝統的なクラッシックバレエから、ジャズダンズ、タップダンス、ヒップホップ、ファンキーダンス、それからちょっと変わったところではバトントワリング、チアダンス、新体操、フィギュアスケートまで。単なる舞踏ではなくスポーツに属するものまで含めて「踊る子ども達」は確実に増えているのだ。

 また、そういった教室の受け入れ年齢が下がっているのも特徴だ。ほんの10年前までは、バレエやダンスの教室も小学生からというところが多かったが、今や3歳からの受け入れは当たり前という世界になりつつある。今どきの3歳といえば、おむつがとれない子も多いというのに、いっちょまえにステップなんぞ踏んでるのである。ひと昔前なら、踊りを習うといえば、バレエか日舞くらいだったのが世の中変わるものである。

 このダンスブームゆえか、地域のイベントでダンスコンテストが開かれたり、子どものダンスパフォーマンスが行われたり、子どもの踊る姿を目にする機会も確実に増えている。見れば、「かわいい、いいなあ」と思う人も増え、またダンスキッズ人口が増えるという構図が見える。もちろん、ダンス人口が増えているから、イベントなどに参加する機会も増えているのだろうが、イベントを開催する側にとってもたいした装置もいらず、場所もあまり問わないダンスは非常にうま味があるのだろう。

 大規模な複合商業施設の中に入っているダンス教室もかなり多く、どこも繁盛しているが、商業施設と教室の併設という戦略の勝利ともいえるように思う。買い物ついでに子どもに習いごとという利便性、また、発表の場として商業施設を使える場合もあり、まさに共存共栄しているといえるのではないか。

 今回は、まさにそのパターンで人気を博している子ども向けのヒップホップ教室をのぞいてみた。


●複合店舗内のカルチャーは送迎楽々で大人気!

 京王相模原線南大沢駅は、ここ数年、ベッドタウンから「わざわざ出かけて行く街」へと変貌してきた。駅前には巨大なイトーヨーカドー、人気のシネマコンプレックス、そしてアウトレットモールもあり、1日中遊べる街になっているのだ。休日にはかなりの人出で駐車場にも列ができるアウトレットモール「ラフェット多摩」の中に、TAMAカルチャーカレッジがある。ここはいわゆるカルチャーセンターで、大人向けの講座も幅広くやっているが、子ども人口の多い土地柄を反映してか、この南大沢では子ども向け講座も多様に展開している。

 もちろん、子ども向けのダンスの講座も多い。「クラッシックバレエ」「キッズダンス」「フリースタイルダンス」「ヒップホップ」「バトントワリング」そして4月からは「チアダンス」も開講する。

 今回はその中でも人気が高いという「ヒップホップ」の講座をのぞいてみた。年齢は幼稚園児から小学校中学年くらいの子どもたちが、この日は15人ほど受講していた。はじめの15分くらいはマットを使ってのストレッチ。かっこよく踊るためには自由に動かせる体を作らなければ、ということだろう。もちろん、ケガ防止のためにもストレッチは欠かせない。ちょうど作品発表の機会が近いということもあり、ストレッチの後は、今、取り組んでいる作品の全員で踊るパートの練習、次はパートごとに分かれて練習と続いていた。

 先生たちもさすがヒップホップという雰囲気で、ラフで気さくな感じ。そして、とてもかっこいい。ああいう姿を見てしまうと、「うちの子もあんな風になれればいいなあ」と夢見てしまう親の気持ちはよくわかる。それが、以前なら女の子はバレリーナくらいしかモデルがなかったのが、今は、ルーズな服を着て、脱力して踊るようなダンスでも「かっこいい!」と思える時代になったのだから、子どもにダンスをと望む親が増えるのは当然かもしれない。

 

 この教室では、スタジオの後方に観覧用のイスが置いてあり、送迎してきたお母さんたちはレッスンを見学できるようになっていた。レッスン時間は1時間、見るのが好きな親なら飽きない時間だし、あまり見るのが好きじゃないという親なら、周辺のお店でショッピングしていればすぐに時間はたつ。子どもの習いごとに熱心な親にとっても、「子どもの習いごとの送迎なんてだるいわ〜」という親にとっても、複合商業施設内のスクールはメリットいっぱいなのだ。

 このTAMAカルチャーカレッジの特徴であり、受講生に喜ばれているのは、「ラフェット多摩」の屋外ステージでの発表の機会が多いことだともいう。練習はしていても、発表会となるとお金も労力もかかると敬遠する親も多い中、ここの講座だと改めて発表会、という形をとらなくてもラフェット多摩でのステージが割合組まれているのだ。昨年はなんと年間4回もステージを経験した子もいたそうだが、同じ商業施設内の教室ということで、出演機会も優先的に回ってきて、費用も決して高くないというのが親には魅力のようだ。これも、単独の教室ではなかなか考えられないことであり、複合商業施設内のスクールの強みを感じさせた。おまけに、子どものダンスのステージは毎回なかなかの人気で、ラフェット多摩の集客にも貢献しているという。まさしく相乗効果である。


●ダンス用品ならここ! チャコットのキッズコーナーは今

 そんな子どものダンスブームは、ダンス用品、ウェアなどの販売店にはどのような影響を与えているのか、チャコット渋谷本店をたずねてみた。バレエやダンス、踊り系に関わる人なら知らない人はいない「チャコット」だが、数年前まではあくまでも大人向けのものが多く、子ども用品も充実しているのはバレエだけという状態だった。しかし、教室の増加ぶりはチャコットにも反映しているのだろうか。

 結論から言うと、予想したほどには、バレエ以外の子ども用品の売り場は拡大していなかった。バレエ以外のものはとくにコーナーを設けてあるわけではなく、オーダーのフロアに、新体操やフィギュア、チアなどの競技用の華やかな衣装が飾ってあった。その同じフロアに、ダンスではおなじみの黒のブーツカットのパンタロン、ハーフトップなどが展示されていたが、数も種類もあまり多くはない。教室の増え方から考えるとこれはちょっと意外だったのだが、チャコットの方に聞いてみてその理由がわかった。

 子どもはどんどんサイズが変わるため、始めるときから本格的に道具やウェアを揃えさせる教室は少なく、また、そういう気軽に始められるところがクラッシックバレエと違うダンス系教室の魅力にもなっているというのだ。たしかに、TAMAカルチャーで見た子ども達もいわゆる「動きやすい普段着、シューズ」で踊っていたっけ。

 

 その分、いざ発表会だステージだというときに本格的なものを揃えたい、となったときには、オーダーでならかなり小さなものまで対応できるという体制をチャコットではとっていた。おもちゃのように小さなジャズシューズ、タップシューズの見本は見ているだけでかわいらしい。また、今はまだそれほど多くはないが、常備するようにしている子ども用の黒パンタロンなども、数年前までは店頭にあることは少なかったのだとか。それが、需要増に応えて常時展示され、販売されるようになっているというのだから、やはり着々とダンスブームの追い風はきているようだ。

 さらにチャコットで驚かされたのは、キッズバレエのコーナーの充実ぶりだ。バレエ以外のダンス教室もこれだけ増えてくると、バレエは下火なのかと思いきやそんなことはないそうだ。バレエを第一に考えている子どもや親ではなくても、クラッシックバレエはすべての踊りの基礎という考えが浸透してきていて、今やっているダンスの基礎作りのためにとバレエを平行して習う子どもは多いのだという。もちろん、「夢はバレリーナ」という子どもも今だに多い。

 その結果、ほかのダンス人気に食われるのではなく、バレエ人口増にダンス人気も寄与しているというのが現状のようだ。チャコットでは、そんなビジネスチャンスを逃さないために、様々な工夫を凝らし、バレエ少女たちが立ち寄りたくなる店づくりを行っていた。キッズバレエ商品の充実はもちろんのこと、売り場ではバレエレッスンのDVDを流す。それも画面は子どもの目の高さにわざわざつけ変えたという念の入れようだ。休日ともなると、この画面を食い入るように見ている髪をシニヨンにした女の子が少なくないのだとか。

 今はまだ、バレエ以外のダンスウェア、用品のキッズコーナーまでは作っていないというチャコットだが、この先はどうなるかわからない。このままキッズダンスブームが盛り上がり続ければ、いつかはワンフロア全部「キッズフロア」という日が来るのかも、という予感がした。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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