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連載コラム

第17回「なんたって「わかりやすさ」がいちばん! おばあちゃんの原宿・巣鴨地蔵通り商店街の吸引力を探る!」

[ 2005年5月2日 ]

●なぜ、人は年を重ねると巣鴨に向かうのか?
 個人の趣味、嗜好の多様化を反映しているのだろうか。キャリア・マムの面々を見るだけでも、同世代だとしても、かなり好みも行動パターンも違う。ある人が「大ヒットよー!」と興奮して新商品の報告をしてきても、無関心な人にとってはなんでもない、ということが以前よりも増えているような気がする。

 そんな私たちだって、ほんの20年前は同じ雑誌を見て、同じタレントやモデルをファッションリーダーと仰ぎ、同じようなファッションに身をつつんでいたはずなのに。

 しかし、もしやこの多様化は一時的なものなのか? とテレビで巣鴨地蔵通り商店街の繁盛ぶりを見るたびに考えていた。今はこんなに「好みは人それぞれ」に見える私たちだけど、あと20年もたてば、みんなうれしそうに巣鴨に集うようになるのだろうか? 現在の多様化は女性の進化の一過程に過ぎないのだろうか、と。

 まあ、そんなことを考えてしまうほど、巣鴨は高齢の女性で混雑している。「おばあちゃんの原宿」とはよく言ったもので、テレビの中継などで見るあのゴタゴタ感は、まさに原宿の竹下通りである。若いころ、お世話になった人も少なくないだろう竹下通り! あの喧騒が巣鴨にはあるらしいと聞いて、ちょっと見に行ってみることにした。

 景気は回復傾向とは言え、まだまだ集客に苦労している店は多い。巣鴨の何がそんなに人をひきつけるのか、学んでみる価値はあるに違いない。


●今でも喫茶店が点在する街・巣鴨

 平日の午後という比較的、人出の少なそうなときを狙って行ったためか、いつもテレビで見るほどの混雑はなかった。しかし、さびしくない程度に、十分に人は集まっている。そして、噂にはきいていたが、本当に高齢者が多い! 何人かで連れだって来ている人が多いところも、竹下通りとの共通項だ。

 巣鴨地蔵通り商店街に入る前、巣鴨駅の界隈を歩いたときから感じていたのは、「巣鴨では喫茶店が生き延びている」ということだ。今、都心のほとんどの街では、喫茶店というものは希少な存在になっている。代わりに台頭しているのはカフェ。とくにスタバやエクセルシオールカフェなどは、増殖していると言ってもいいほどだ。そんな中、「喫茶店」という文字は本当に見かけなくなったと思っていたが、ここ巣鴨にはあるのだ! 駅から半径100メートル圏内に何軒あるのかわからないが、普通の街よりは絶対に多いはず! そう思わせる頻度で「喫茶店」があった。

 キャリア・マム世代のママたちでさえ「なんか注文の仕方がよくわからなくって、どぎまぎしちゃう」と言うスタバのような店に、おばあちゃんたちが行くわけがないのである。ショッピングで歩き疲れたときに「ちょっとお茶する」ならば、やはりゆっくりできて、雰囲気のある喫茶店に腰を落ち着けたいのだろう。 もちろん、喫茶店でさえ「ハイカラすぎる」と感じる人も多いだろう。そのせいか、甘味喫茶も巣鴨には多い。もちろん、ファーストフード店はない。いや、巣鴨にはあるが、地蔵通り商店街にはなかった(入口付近に吉野屋はあるが・・・そこのみ)。


●やっぱ買い物するなら「専門店」でしょ! な街・巣鴨

 そして、この商店街で目につくのは「専門店」という文字だ。「帽子専門店」「はきもの専門店」「洋傘専門店」「仏具専門店」「海苔専門店」「金物専門店」などなど、「こんなものを専門に扱っていて商売は成り立つのだろうか?」と、余計な心配をしたくなってしまうようなものまで、専門で売っている店が軒を並べている。

 買い物する側の身になってみても、これではあちこちの店を回らなければならず、それぞれの店で買い物をすれば、袋も多くなったりして大変なのではないか、とも思う。それがわずらわしいから、スーパーがあるんじゃないの? とも。

 しかし、買い物をするときに「時間をかけたくない」と思わない人々も、確かにこの世の中にはいるのである。ちょっとしたものを買うために、わざわざ巣鴨まで出かけて行き、お目当ての専門店まで行って買い物をし、疲れたら甘いものを食べて、ついでにおしゃべりも楽しむ。そんな行動パターンを楽しめる人たちがいるのだ。それが「おばあちゃん」と呼ばれる人たちなわけだが。

 ついつい、自分たちは「面倒じゃないほうがいい」「短い時間ですませられたほうが便利」という発想をしてしまうが、そうではない人たちもいるのだと、この巨大な専門店街には教えられる。買いたいものを探して、1つ1つの店をのぞいていく。お店のおじちゃん、おばちゃんと言葉を交わす、それが買い物の醍醐味ではなかったのかと、この商店街を歩いていると思い出す。

 若いころ、あの竹下通りを1日中歩いていても飽きなかった。そして、結局はたいして買い物しなかったことも多かった。なのに、また行ってみたくなる、そういうものだったなあ、ということも思い出させてくれた。


●よその街とは明らかに売れ筋が違う街・巣鴨

 そんな巣鴨商店街ならではの光景は、普通の街、普通の店舗なら「どこに置いてありますか?」と、聞いて探さなければいけないような商品が、堂々と店頭のど真ん中に展示されているということだ。

 通称「モンスラ」のもんぺ風スラックスや、「ハットクリップ」(帽子が風で飛ばないように、洋服に留めておくためのクリップ)、「赤い下着」(これはけっこうメジャーだが)、「ショッピングカート」(高齢者が買い物に行くとき押して歩くやつ)などが、堂々と陳列されているのだから、ちょっと驚きだ。


●巣鴨の吸引力は「わかりやすさ」! ほかの街なら、なにができるか?

 しかし、これもこの街を歩く人々がどういう層かと考えれば、ごく自然なことである。専門店が多いことといい、こういった陳列の仕方といい、とにかく巣鴨の店は「わかりやすい」がキーワードになっていると、しみじみ感じた今回の巣鴨探索だった。

 買いたいものがどこにあるのか、わかりやすいことが大事。だから、「●●専門店」という表示の仕方がいいのだ。中には店の壁に「蒟蒻」とか「軍手」と、大きな文字で書いてある店もあった。何を売っている店か、わかりやすいことこの上ない!

 そして、今、流行しているものや、お店がおすすめしたいもの、安くなっているお買い得品などは「わかりやすく」前に出しておいてほしい! もちろん、休むときには注文の仕方で悩むような店ではなく、「ホット」でも「ブレンド」でも「コーヒー」でも、温かいコーヒーが出てくる喫茶店がよいのだ。

 高齢者の多い街だから、ということは無視できないが、この「わかりやすいのが一番!」という傾向は、高齢者に限ったことでもないような気がする。巣鴨では、それがたまたま顕著に出ているだけなのではないだろうか。

 巣鴨地蔵通り商店街の探索を終えて、帰りには話題の巣鴨信用金庫の前を通ってみた。キャッシュカードによる盗難被害を避けるために、合言葉を使わないと、預金を引き出すことができない口座「盗人御用」を商品化した巣鴨信金は、やはり巣鴨に根付き、高齢者をうまく取り込んでいることを感じさせる信用金庫だった。ATMの手数料が、365日いつでも無料や、住民票、印鑑証明などの自動交付機の店頭設置(一部店舗のみ)、年金受け取りの無料宅配サービスなど、まさに「かゆいところに手が届く」サービスを展開。この「わかりやすい親切さ」がうけるのは、わかる気がする。

 巣鴨だから、高齢者サービスが進むのか、高齢者に手厚い、わかりやすい街だから高齢者が集ってくるのか? おそらく相乗効果なのだろう。たとえば、子育て中ファミリーを集めたければ、働き盛りの夫婦を集めたければ、若者を集めたければ、それぞれに工夫できることがあるのではないか。巣鴨の街には、そんなヒントがたくさん転がっていた。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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