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連載コラム

第21回「やっぱり奥様はデパ地下がお好き!」ワクワク気分にさせてくれるデパ地下……その活気の源は「声のディスプレイ」かもっ

[ 2005年9月8日 ]

●店によってかなり違う? 「デパ地下の印象」の事前リサーチ
 テレビの情報番組や情報誌でも定番の人気企画“デパ地下!” そういや、キャリア・マムとしたことが、デパ地下探検はしたことがなかったんじゃない? ということで、今回はデパ地下の探検に出かけることにした。
 しかし、事前調査をしてみたところ、デパ地下に対するイメージは人によってかなり違うことがわかった。「デパ地下ってハイソで近寄りづらい」という人もいたが、意外にも「大きな声で呼び込みをやっていて賑やか」「混んでいるし、うるさいから少し敬遠しちゃう」という人もいて、私としてはちょっとビックリ。
 私のなかでもデパ地下は、おすましなイメージがあったのだけど、どうも最近は、ひとくくりにはできないらしいぞと予測しつつ、新宿まで出かけてみることにした。


●「ここはどこ?」な威勢のよさ 〜京王百貨店


 京王百貨店の食料品フロアは、地階と中地階の2フロアに分かれている。このちょっと変わった造りゆえに、正直「狭い」感じが否めない。狭いというか天井が低く感じるのだ。とくに地階のほうは、いわば頭のうえに「中地階」がのっているようなものだから、かなり窮屈な感じがしてしまう。
 京王線の改札口前にある入口から入ると、とたんに左右から元気のいい声がとんできて、なんだか「デパート」という感じがしない。どこかの市場に紛れ込んだような印象だ(ほめてるつもり!)。右手のベーカリーは「焼きたての食パン」、左手の店では「小梅ゼリー(期間限定)」を売っていたが、どちらも人だかりができていた。食パンと小梅ゼリーなんて、珍しいものではないし飛びぬけて安いわけでもない。しかし、なんだか威勢のいいかけ声、そこに群がっている人たちの姿を見ると「買っておかねば」という気になってしまうようだ。うーむ、おそるべし呼び込みの声!

 

※期間限定


 その呼び込み効果が顕著なのは、鮮魚コーナーだ。この日は夕方に行ってみたのだが、運よくちょうど「マグロの解体」が始まるところだった。店内の通路はかなり狭いのだが、やはりこれが始まると立ち止まる人が多い。はっきり言って、通行の邪魔にはなっているのだろうが、見事な包丁さばきと話術に私もつい見入ってしまった。

 「マグロの中落ちってあの部分なのか〜。へえ〜、スプーンみたいなのでこそぎ落とすんだ〜」などと感心しつつ、大きなマグロの塊が目の前で解体され、トレイにのせられるまでの一部始終にくぎづけ。切り取られたばかりのマグロは、さすがに鮮度抜群に見える。トレイにのるやいなや、見ていた人が手を出すことも多く、なんだか「買わないと損している」ような気にさせられる。人前での「マグロの解体」は集客効果も抜群なら、財布のひもを緩めさせる効果も抜群のようだ。
 そして、このパフォーマンスに人を立ち止まらせる力をもっているのは、「え〜、らっしゃい! らっしゃーい! マグロの解体が始まるよ。新鮮なマグロだよ! さあて、まずは中落ちから」と、うたいあげる呼び込みというか、まさにこれは「ボイスパフォーマンス」と言ってもいいだろう。


●夕方の総菜、弁当コーナーの呼び込み競演〜 京王vs小田急

 京王百貨店の中地階の奥にある総菜、弁当コーナーも、1日のうちでもっとも客足が伸びるだろう夕方とあって、すごい活気だ。
「できたてですよ」「揚げたてですよ」「普段よりも安くなってますよ!」「今日の分はこれで最後」などと各売り場で声があがる。地階にも負けない威勢のよさで、やはりここが「デパート」であることを忘れさせる活気だ。

 さらに、小田急百貨店の本館地下2階をのぞいてみたら、こちらも夕方のこの時間、やはり総菜コーナーの賑やかさはすごかった。 とにかくあちこちで「できたて!」「切りたて!」という呼び込みが聞こえる。この「たて!」という言葉がキーワードのようで、「○○したて!」という言葉は、お客様に対して投げかけやすく、またインパクトも大きいようだ。

 京王も小田急も基本的にはどの店も声を出している。が、「○○したて!」の商品がないタイプの店はどうしても「いらっしゃいませ。○○です」と店名を連呼するだけになり、声のトーンもあがりにくい。たしかに「○○」という店だというのは見ればわかる。それをことさら大声でアピールするのは、うるさいと思われれば逆効果にもなりそうだ。

 しかし「できたて!」「切りたて!」という声がけは、お客様にお知らせする、告知するという役割を果たしているという気持ちで声が出せる。なにも押し売りしようというのではない。「こんなにおいしいパンが焼けてるのだから」「新鮮な刺身なんだから」と、お客さまにとってのメリットを教えなきゃ、という使命すら感じることができるのだろう。「焼きたてですよー!」と声を張り上げる店員さんは、なんだか誇らしげですらある。
 つまり、それぞれの店に、「今すぐ見て!」と本気で奨められる商品が1つでもあれば、店頭での声がけも、より活気づくのではないかと感じた。なかには「(容器に総菜が)つめたて!」と叫んでいる人もいた。それ、はじめからつめとけばいいんじゃないの? とつっこみたくなる気持ちはおいておいて、それほどに「今できたばかり!」感を演出することは、大切なポイントだということだろう。


●ボイスパフォーマンスは「歓迎のしるし」?

 ひと昔前の百貨店は、こうでなかったのでは? という気がする。やはり百貨店なのだから、少しおすましして、お客が「がんばって買う」のがデパートの食品ではなかったか。それが、こうやって「どこの市場?」という勢いで売られているのが、21世紀の百貨店なのだ。
 ボイスパフォーマンスは「こんなにいい商品なんだから、買って!」という店側のアピールである。「買いたいのなら売ってあげる」ではなく、消費者に対して「買ってちょうだい!」と訴えてくる。店のほうが消費者に近づいてきているということなのだ。
 そういう変化が、主婦をデパ地下に惹きつけてきたのではないか。今回、そんな風に感じた。実際には、デパ地下で頻繁に買い物をする主婦は少ないかもしれない。現実的には「たまの贅沢でがんばって」買い物をしている人だっているだろう。
 しかし、デパ地下のボイスパフォーマンスは、セレブだろうがおばちゃんだろうが、差別せずに「買ってちょうだいよ!」と訴えてくる。お客様として歓迎されている、そう感じさせてくれるから購入意欲が高まる、そんな効果もあるように思う。


●うれしい気遣い! ショップごとのイートインコーナー 〜小田急ハルク


 熱気あふれる京王と小田急本館の食品売り場から、小田急ハルクへ移動してみた。
 小田急ハルクの地下1階と地下2階は「ハルクフード」という食料品売り場になっている。駅から少し離れるせいか、人出はやや少ないように感じた。しかし、それは実際に人が少ないというよりも、店が広く、通路も広い、京王、小田急本館に比べるとゆったりとした造りゆえの印象でもあるようだ。ボイスパフォーマンスもややひかえ目で、「活気あふれる」というよりは「落ち着ける」雰囲気。
 地下2階には千疋屋、トロワグロのほかカレー、ピザ、コーヒー、パンなどの店舗が入っているが、特筆すべきは、ほとんどの店にイートインコーナーがついていること。どこもそれほど広いスペースはとっていないが、十分に食事もお茶も楽しめるのだ。


 デパートでの買い物を終えて、最後に食料品売り場に寄ったときなど、この造りはうれしい。帰路に備えてちょっとお茶したり、腹ごしらえしたりができるというものだ。食料品売り場を散策すれば、「あれも食べてみたい」「これもおいしそう!」と目移りすることも多い。ハルクなら、この店では買って帰って、こちらの店ではイートインしようということもできる。
 これは、なかなか心憎い気遣いであり、うまい商売でもある。ボイスパフォーマンスにのせられて買うというのではなく、その場でゆっくり試してみて、気に入れば家庭で使う分も買って帰ってもらう。そういう「売り方」もあるのだと感心させられた。


●進化するデパ地下、多様化はこれからますます顕著に

 威勢よくものを売ってワクワクできる店と、落ち着いて物が選べて試せる店。どちらがいいのかは好き好きだろうし、その日の気分にもよるだろう。「デパ地下」と一口に言うが、やはりかなり多様化していることは間違いない。新宿のように複数の店舗がある街ならば、消費者としては気分や用途で使い分けて楽しんでもよさそうだ。
 しかし、やはりデパ地下は楽しい! 今回は「取材だから買い物はしない」と決めて回ったので事なきを得たが、普通にプラプラ歩いていたら、絶対にたくさん買い物してしまうに違いない。やはりデパ地下、おそるべしである。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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