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連載コラム

第24回「郊外はシネコンラッシュ!「映画の楽しみ方」を変えたシネコンは、ベッドタウンの必須アイテムに?」

[ 2005年12月9日 ]

●シネコン密集地・多摩地区を検証する!
 レンタルビデオが普及したころから、凋落し続けていた映画業界が、元気を取り戻して久しい。テレビとビデオの狭間で、風前の灯火と思われていた時期もあったというのに。
 映画の復活に大きな役割を果たしたといわれているのが「シネコン(シネマコンプレックス)」である。大小さまざまなスクリーンが複数存在する映画館なのだが、たしかにキャリア・マム事務所の近辺だけを見渡しても、新百合ヶ丘、南大沢、橋本とすでに近場に3つもシネコンがあるのだ。
 そして、ついに! キャリア・マムのお膝元・多摩センターにも、11月15日にシネコンがオープンした! この近距離に、これだけシネコンが乱立して大丈夫なのか? いや、それほどシネコンが支持されているということなのか?

 郊外のシネコンブームを検証するべく、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の封切日である11月26日、キャリア・マム周辺シネコン視察ツアーを敢行してみた。


●新百合ヶ丘のシネコンは、ファミリー密着タイプで大人気!

 まずは、このあたりでは一番の老舗「ワーナー・マイカル・シネマズ 新百合ヶ丘」に行ってみると、なかなかの盛況だった。
 「SATY」や「VIVRE」と同じテナントビルの6階という立地のよさもあるのだろうが、店内の賑わいが、そのままシネコンまで続いている。エレベーターも満員で、特に小さな子ども連れのファミリーなどは、かなりの確率でシネコンに吸い込まれていく。なかにはハリー・ポッターフリークなのか、ハリー・ポッターの扮装(マントとメガネとステッキ)の小学生もいて微笑ましい。
 「SATY」の文具売り場、携帯売り場などがある5階の一角に、シネコンの入口のゲートがあり、そこをくぐるとシネコンにあがっていくエスカレーターになっている。このゲートをくぐった瞬間から、それまでの生活臭のあるスーパーの雰囲気とはガラリと変わるのだ。

 6階にあがると、そこはまったくの別世界。家族連れ、高校生や中学生のグループ、若いカップルなどが、「どの映画にする?」「今からだと、これがちょうどいいけど」「え〜、ちょっと待って、ハリー・ポッター見ようよ」などと、賑やかに物色している。
 かつて映画は、見る作品も見る時間(何時からの回か)も決めてから出かけて行ったものだ。それも、東京だったら新宿や渋谷、有楽町などの「都会」にある大きな映画館に、である。
 それが今は、家から徒歩や自転車で、または、せいぜいバスで出かけられる地元のシネコンに行ってから「なに見る?」でいいんだ・・・と、そのお気軽さに改めて驚いた。それでいて、劇場の雰囲気は悪くない。それぞれのシアターは決して広くないし、スクリーンも大きくないが、劇場そのものは広くて、むかしの映画館がもっていた非日常感は十分にある。
 いつもなら食べないポップコーンだって、「映画見にきたんだから」と、ただそれだけの理由で「買おうかな」という気分にさせる雰囲気があるのだ。また、上映作品が1つではないため、劇場のあちこちでいろいろな映画の情報を得られるのが、シネコンのよさでもある。

 「ハリー・ポッター」を見にきた人でも「親切なクムジャさん(韓国の復讐劇)」や「always〜三丁目の夕日(昭和30年代の日本を舞台にしたノスタルジック劇)」や「イン・ハー・シューズ(違うタイプの姉妹、それぞれの成長を描いたアメリカ映画)」などのポスターやチラシを目にして「これもいいなあ〜」と、さまざまな映画に関心をもつ入口にもシネコンはなっているようだ。
 普段はあまり映画を見ない人にも、なにかお目当ての映画があって、一度足を運ぶと「次はなにを見にこようか」と思わせる、そんな力がシネコンにはある。

 そのときの上映作品だけではない。次回、上映作品もかなり大がかりに告知している。新百合ヶ丘は「ナルニア国物語」、最後に回った橋本では「男たちの大和」の大きな告知看板があり、プロモーションビデオを流すなど、かなり力を入れてPRしていた。「ハリー・ポッター」や「私の頭の中の消しゴム」を見にきた人の中でも、このプロモーションに洗脳されて帰っていく人も少なくないはずだ。


●デートにも使える!

 南大沢のシネコンは「おでかけ気分」も満点!

 次に回ってみたのは「TOHOシネマズ南大沢」。ここはとにかく立地がいい。南大沢駅のすぐ横にある「fab」というビルの4〜6階がシネコンになっている。駅から連絡しているのは3階だが、シネコンにつくまでにスタバがあり、はなまるうどんがあり、ウェンディーズ、カプリチョーザ、サーティワンアイスクリームなどがある。駅からは雨の日に傘がなくても「いいや!」と思えるほどの距離しかない。休日ともなれば、スタバの前でミニライブをやっていることもある。「Fab」に足を踏み入れた瞬間から、ベッドタウン・南大沢とは思えない「街に遊びにきた」雰囲気に浸れるのだ。

 

 スタバやサーティワンの前を通ってシネコンに向かう通路には、上映中の作品のポスターが貼られていて、「映画気分」の盛り上げにひと役かっている。また、シネコンにつながるエスカレーターの下には扉があり、そこからすでに「映画館」という雰囲気になっていた。このエスカレーターの下には、上映中の作品のチラシや次回上映予定作品のチラシがギャラリー風に置かれているし、ポスターも貼られていた。そう、エスカレーターに乗る時点ですでに「映画を見にきた!」という気分になれる造りになっているのだ。
 エスカレーターの下まで、南大沢名物(じゃないのか? 私は大好きなんだけど)「キャラメルポップコーン」の甘い香りが漂っているのも、子どもなら(私もだけど)たまらないはず。

 気楽に楽しめるのがシネコンのよさではあるが、それゆえにイベント性は薄くなっているように思える。「いつでも行ける、気楽に行ける」その分「ワクワク感」は今ひとつ・・・なのではないかと。だから、ファミリー客にはその手軽さがウケても、たとえばデートで行くにはどうよ? という面もあるかと思っていたが、南大沢のこの立地は、若い子にも十分ウケそうだ。
 ちなみに、「fab」の中には、アウトバックというステーキハウスが入っているが、ここはボリューム、価格ともにちょっと敷居が高い。しかし、そこそこ健闘しているのかと思っていたら、座間あたりのアメリカ軍駐屯地のファミリーご用達らしいのだ。南大沢の隣駅・多摩境にあるコストコ(会員制のディスカウントセンター)でまとめ買いをし、南大沢のシネコンで映画を見てステーキを食べるというコースを、休日のイベントにしているアメリカ人ファミリーが案外多いんだそうだ。
 そんな思わぬ客層も巻き込んで、南大沢のシネコンは身近さ、手軽さに「おでかけ」感も加味して大盛況中のようだ。


●子育て中ママの応援隊・MOVIX橋本には、託児割引もあるぞ!

 3番目に行ってみたのは「MOVIX橋本」。ここは、駅からはちょっと離れている。1階にはスーパーアルプスも入っているSING橋本というビルの2階が「MOVIX橋本」だが、ここもなかなか楽しいスポットになっている。なにしろ、1階にはモスバーガー、リンガーハット、リトルマーメイド、2階には大戸屋、ゲームセンターもある! 2階に上がるエスカレーターのある空間は吹きぬけになっていて、下からシネコンフロアを見上げれば、華やいだ雰囲気があり「上がってみたい」気分にさせる。手軽なファーストフード店やゲームセンターが集まっているのも、学生や若い人にウケそうだ。

 

 しかし、なんといっても「MOVIX橋本」には、託児の割引サービスがあるのだ。駅前にある「ミウィ橋本」の託児施設に子どもを預けて映画を見ると、託児料金が0〜1歳児:1時間/950円が760円にディスカウントされる(3時間まで)。また、映画の入場料金も同伴者1名まで1,200円になる。おまけに席もリザーブしてくれて、至れり尽くせりだ。つまり、子どもを預けて夫婦で映画、友だちと映画というママの息抜きを強力にサポートしてくれるのが「MOVIX橋本」なのだ。


●料金も劇場も、映画業界は努力してる! シネコン隆盛に納得!!

 映画の料金は大人1,800円と決して安くはない。しかし、よくよく見てみると、今はあらゆる割引がある。女性ならレディスデー、遅い時間帯ならレイトショー、平日午前中の1回目なら1,200円になる割引、夫婦のどちらかが50歳以上なら2人で2,000円になる夫婦50割引、高校生3人以上のグループなら1人1,000円になる高校生友情プライスなど。「1,800円は高い!」と思い込まず、ちょっと工夫すれば、安く見られるチャンスをたくさん用意してくれているのが今の映画であり、それも手軽にちょっといい気分で見られるのが、シネコンのようだ。

 思えば、今は大作ではない映画に秀作、おもしろい作品が多く出ている。それは、シネコンが増えたことと深い関係があるに違いない。一気に大映画館を満員にできる映画しか生き残れないのでは、大作主義にならざるを得ないが、シネコンのおかげで、味のある小品でも商売できるようになってきたのだろう。
 「テレビやビデオに押されて消えてたまるか!」と必死になった映画業界の努力もあって、今のシネコンの隆盛はあるに違いない。新百合ヶ丘、南大沢、橋本を検証した限り、それぞれのシネコンが、地元にしっかり根づいていると感じた。

 そこで「これは多摩地区だけの現象なのか?」と、キャリア・マム会員に情報提供を求めてみた。

*「私が住んでいるところから、一番近い映画館は百貨店の最上階にあるのですが、休日は一杯です。席は全席指定で、席をとるために並んだりしますよ。(横浜港北ニュータウン発)」
*「福岡はシネコンが多いです。私がよく行くのは、トリアス久山にあるシネコンです。郊外型の大型ショッピングエリアで、無料の駐車場も4,000台以上はとめられると思います。他には、ソラリアプラザやキャナルシティの中にあるシネコンを利用したり、イオン系列の大型ショッピングセンターにも映画館があったりするので、本当に便利です(福岡発)」
*「地下鉄の駅に隣接しているSEIYUが入っているビルに、MOVIXの映画館があります。家から徒歩5分という目の前なので、娘が幼稚園に行っている午前中に見ます。インターネットで指定席(金額同額)もとれ、当日は機械に通すだけで入場できるので、並ぶこともなく便利です。500円で会員になるとポイントがもらえて、ネットでチケットを購入すれば5回のポイントで、1回分の無料券とポップコーンがサービスになります。(仙台発)」
*「夫の単身赴任先である埼玉県熊谷市では、スーパーの最上階が映画館になっていて、チケットもネットでとれます。(熊谷発)」

 おお〜、やはり! 全国津々浦々、シネコン生活はすっかり根づいていたのね〜。こりゃ、主婦やママにも強い味方だわ。

 さて、多摩センターである。「ワーナー・マイカル・シネマズ 多摩センター」の周囲には、サイゼリア、ディッパーダン、マクドナルド、サブウェイ(できたのよ!)があり、映画と食事やお茶が楽しめるスポットになっている。ちょうど、オープンした11月から年内は、都内でも有名になりつつあるクリスマス・イルミネーションが、駅からシネコンまで導く遊歩道を彩ってくれている。これは、デートには使える! 使えないわけがない!
 まだオープンしたばかりで知らない人もいるかもしれないけれど、意外に穴場かもしれない。これからクリスマスに向けて、多摩センターのシネコンも右肩上がり? になりそうな予感大である。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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