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連載コラム

第26回「大興奮の『駅ナカ』探険隊! 人は通路に売っているモノを買ってしまう生き物である・・・「ecute(エキュート)」の誘惑は手ごわいぞー!」

[ 2006年2月1日 ]

●『駅ナカ』偵察に出かけてみよう!
 『駅ナカ』というステキなスポットが、この世に登場したのは2005年のことらしい。デパ地下はよく聞く略語だが、今や『駅ナカ』もデパ地下なみに市民権を得ているようだ。

 『駅ナカ』は、名前のごとく「駅の中」にある。「ああ、うちの駅ビルにもルミネがあるわよ」と思ったあなた、それと『駅ナカ』は違う。
 よく覚えていてほしい。『駅ナカ』の場合は、電車から降りて改札を出るまでの間にショップがあるのだ。
 思い出してみてほしい。今まで電車を乗り継ぐときに、ちょっと小腹がすいたと思ったら、どこで何を買っていたか。JRなら当然、KIOSK(キヨスク)がある。そこで、スニッカーズやカロリーメイトを買っていた、そんな人もいるだろう。
 たとえば、京王線の明大前駅だと、持ち帰り寿司、シュークリームのヒロタ、文明堂、それから立ち食いそばもある。一応、改札を出なくても食料補給くらいはできる。しかし、それは「楽しいショッピングスポット」では断じてない。たいていの駅がそうに違いない。

 ところが、『駅ナカ』は違うらしい。乗り換え時に、食事もショッピングも楽しめるんだと! すでに有名になっている関東の『駅ナカ』の双璧! この際、大宮と品川の『駅ナカ』を、遅ればせながらハシゴしてみることにした。


●「ecute(エキュート)大宮」は線路の上の別天地!

 まず、出向いたのは『駅ナカ』の老舗「ecute(エキュート)大宮」。新宿から埼京線で向かった。
 大宮駅のホームに降り立つが、とくに華やいだ雰囲気はない。キョロキョロ周囲を見まわしてみると「ecute」という表示が見えてきた。これだ! 確信をもって、その表示に従って歩いてみた。

 ホームから階段を上っていくと、そこには別世界があった。階段の下は、たしかに駅だった。しかし、そこに広がっていたのは、おしゃれなショッピングエリアだった。
 通路を進むと、私の右手にいきなり広がるSweetsエリア。銀座マキシム・ド・パリだの、ロイスダールだのチョコレートケーキのTop'sだのが、おいで・おいでをしているのである。
 誘惑をふりきって進めば、今度はFoodエリア。寿司だのお惣菜だのサラダだの、しまいにゃ、おいしそうなパンやベーグルまで! なんの陰謀だかと思うような大攻勢である。
 この日、私のサイフはかなり軽かった。だから、誘惑に負けたくても経済力がそれを許さず通過することができたが、これでお金がたくさんあったら? そりゃ、袋の3つくらいは抱えていたに違いない。

 

 ほかにも、Cafe&Eatーinエリア、Goods&Serviceエリアがあり、通りかかる人すべてを飲み込まん勢いだ。だって、そこは『駅ナカ』なんだから。電車を乗り継ごうって人は(いや、出口に向かう人すら)みんなが通る、通り道なのだ。
 通り道の脇に売ってあるものを、買ってしまうのは人間の性じゃないのか? 夏の観光地でドライブの道すがらに、焼きトウモロコシって食べたくなるでしょう? それと同じなのだ。
 わざわざ買い物に行くわけじゃない。お惣菜もパンも家の近所のスーパーで買ってもいい、いや、そのほうが安い。しかし! 通勤通学の途中で、ここを通ってしまうんだもの。それが運の尽きという人は、きっとかなり多いと思う。おいしそうな匂いのするパン、ケーキ、季節感のあるディスプレイをされたファッショングッズ、「買うつもりじゃなかったのにぃ〜」と、つい買ってしまう人は少なくないだろう。
 かくいう私は、軽いサイフながらも和風の甘味スタンドで「抹茶白玉ぜんざい」とか、食べてしまいました。抹茶はそんなに好きじゃないのに、あまりにもおいしそうに見えたもんだから。くううう。

 あと、関西から関東への進出第1号店である「いかりスーパー」も、入ったら出てこられないくらい大好きなスーパーなので、吸い込まれてしまった。輸入品も多く扱っているおしゃれなスーパーだが、関西気質なのか気どっていない。けっこう安かったりもするのでおすすめ。
 しかし、この「いかりスーパー」、関東で唯一買い物できるのが大宮とは! すごいぞ、大宮! すごいぞ『駅ナカ』! また、『駅ナカ』なんていう新しい業態のところに出店しようと思った「いかりスーパー」もすごい!


●これはもう、「ショップの中に乗り場がある」状態?

 そんな大興奮の1時間を過ごして、今度は少し落ち着いて周囲を見渡してみた。人々が行き交う通路を、ちょっとひいたところから眺めてみる。
 この通路はいわゆる駅の連絡通路なのだ。短い時間で、3番線から7番線に乗り換えるときには、みんな走ったりする通路なのだ。しかし、もはや通路の周りにショップがあるという感じには見えない。「ecute」という、おしゃれなショッピングビルの中に、なぜかJRの乗り場を表す「5」だの「3」だのという数字が表示されている・・・そんな風に見えてくる。その階段を降りて行くと、そこに電車が来るとは信じられない感じだ。

 「ecute(エキュート)大宮」は2005年3月5日にオープンした。JR東日本ステーションリテイリングの『駅ナカ』開発の第1号だ。食品、雑貨、書店、スーパーなど68店舗が、この「ecute大宮」に終結している。68店舗である。ただ、その駅で乗り換えるだけで68ものショップをのぞくことが可能なのである。
 ちなみに「ecute大宮」の中にKIOSK(キヨスク)もしっかり生き残っている。が、ここのKIOSKは普通とはちょっと違う。ブラウンを基調にしたシックなKIOSKなのだ。さすが「ecute」! ただショップを集めただけでなく、トータルでのイメージをしっかり演出しているのだ。

 思った以上に、エキサイティングな『駅ナカ』に私は圧倒された。ここを毎日通る人がうらやましくて仕方がない。いや、しかし「毎日通っていて、お金を使いすぎないのは至難の業だよなあ」と思うと、うらやましさも半分くらいだ。でも、毎日じゃなくていいから、ときどき使う乗換駅が、みんなこんなだったらほんとに楽しいな、と思った。


●「ecute(エキュート)品川」は、『駅ナカ』ながらも落ち着いた雰囲気

 さて、私にとっての『駅ナカ』ファーストコンタクトであった大宮を離れ、今度は品川に向かってみた。品川にも「ecute(エキュート)品川」がある。オープンは2005年10月。店舗数は46軒と大宮よりは小規模だが、こちらもなんとまあ『駅ナカ』とは思えない空間を作り出していた。

 まず、品川はフロアが2階に分かれていた。これは、敷地面積が広くとれなかったための苦肉の策なのかもしれないが、「通りすがり」ではなく「わざわざ立ち寄る」感があり、かえって落ち着いた雰囲気で悪くない。
 2階には、1階フロアの真ん中にあるエスカレーターで上っていけるようになっていて、2階フロアには飲食店、書店、メガネショップなどが入っている。駅からつながっている1階よりは、かなり落ち着いた雰囲気で、私が行った夕方は飲食店など、かなり混んでいた。味の評判も悪くない。「ここで食べたい」と思わせる店が『駅ナカ』にあるということなのだろう。

 

 1階フロアは、やはりフードを中心に展開している。スイーツ、惣菜、そして弁当も! 新幹線も通るようになった品川駅だから、長丁場の旅に出る人もいるわけで、駅弁的なものもしっかり扱っているあたり、なかなか商売上手である。
 「ecute大宮」に比べると、すこし通路から引っ込んでいる感じではあるが、これもやはり『駅ナカ』なのだ。改札を出ないで、これだけ買い物もできるとなると、ほんとに駅ビルさえも「遠く」感じるようになってしまいそうだ。そうそう、「ecute」はJR東日本のグループ会社の運営なので、すべての店舗がスイカでの支払いができる。これもまた『駅ナカ』だなあ、と実感させられる。


●大宮、品川に続く『駅ナカ』はあるのか?

 さて、自分の目で大宮、品川と2つの『駅ナカ』を確かめてきた。たしかに『駅ナカ』はすごい。楽しい! じゃ「これって大宮と品川にしかないの?」と、キャリア・マム会員に聞いてみた。
 しかし・・・残念なことに、この「ecute」のように改札を出ないでショッピングという巨大エリアはあまりないようだ。静岡駅のアスティ、京都駅の伊勢丹など「駅からすぐ」のいいお店情報は集まってきたものの、「改札は出る」というのがほとんど。あとは、いわゆる駅の通路沿いにビアードパパのシュークリームがある、マネケンのベルギーワッフルがあるという情報。たしかに『駅ナカ』にあればうれしいショップではあるが、やはり「ecute」とは規模が違う。

 JR東日本が「鉄道以外の事業拡大」という大命題のもとで取り組んできた『駅ナカ』ビジネスは、残念ながらまだ広がりを見せていないようだが、すでにある『駅ナカ』の評価が高いことは間違いない。そういえば、2007年度には「ecute」が立川駅にも進出するのが決まっているとか。

 この流れをJR以外の電鉄が見逃すはずはなかろう。きっと、小田急だの京王だの阪神、阪急も似たような形態の店舗を考えるんじゃないだろうか。それくらい『駅ナカ』は魅力にあふれたエリアだった。乗り換え時間の過ごし方や駅での待ち合わせなど、そこを利用する人たちの行動パターンも変えるだけの力を『駅ナカ』は持っている。
 2005年に大宮に登場して、もうじき1年が経つ。まだ後続は多くないようだが、いずれは多くの駅で導入されるに違いない、ビッグビジネスの種である。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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