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連載コラム

駐車場のセキュリティ事情(1)

[ 2009年2月25日 ]

駐車場では、自動車泥棒や車上荒らし、いたずらなどの犯罪が起きており、犯罪発生の抑止と発生後の犯人特定のために効果的なセキュリティシステムが、監視カメラだ。しかし、駐車場経営者にとっては、売り上げに直結しないため、導入に前向きでないのも現実だ。しかし最近、駐車場経営者だけでなく、利用者にとっても利便性が高く、駐車場を差別化できるシステムも登場している。本稿では駐車場セキュリティの現状と将来について解説する。

久保隆太郎


 多発する泥棒や不審者の侵入を防ぎ、犯人を特定させるための手段として、オフィスや住宅にセキュリティシステムを設置するのは、今日では定番となったが、駐車場においても盗難や事件が多発しており、監視カメラの設置が求められている。表1に挙げたように、駐車場におけるトラブルは様々だが、自動車盗難と車上荒らし(車上ねらい)の具体的な数を紹介する。

駐車場で起きるトラブル例
表1 駐車場で起きるトラブル例 (出典:ピー・エス・ディー)

 警察庁の「平成19年の犯罪情勢」によれば、2007年における自動車盗難の認知件数は、2003年から減少傾向にあるものの、3万1790件と高い数字となっている。また、車上荒らしは16万8,129件であり、自動車泥棒の42.5%という検挙率に比べると、検挙率は24.5%と低くなっている。自動車盗難と車上荒らしそれぞれで、最も多い被害場所は駐車場(ともに60%程度)であり、車上荒らしの場合、62%が施錠した車内から盗まれている。

自動車盗の認知・検挙状況の推移(出典:「平成19年の犯罪情勢」警察庁、2008年5月発表)
自動車盗の認知・検挙状況の推移(出典:「平成19年の犯罪情勢」警察庁、2008年5月発表)
車上ねらいの認知・検挙状況の推移(出典:「平成19年の犯罪情勢」警察庁、2008年5月発表)
車上ねらいの認知・検挙状況の推移(出典:「平成19年の犯罪情勢」警察庁、2008年5月発表)

 こうした犯罪に遭った場合には、たとえ犯人が逮捕されたとしても、自動車や盗まれた財産が無事に戻ってくる保証はない。実際通年の盗難自動車の還付率(取り戻せる確率)は30%程度である。また、企業が業務データの盗難に遭った場合には、個人情報の漏洩や、顧客からの信用の失墜などにつながる可能性も高い。この状況は、駐車場でも何かしらの「自己防衛」を行う必要があることを示唆していると言えるだろう。

 全国の都道府県で、2007年自動車盗難ワースト1となったのは大阪府だ。そこで、大阪府警察は自動車盗難や車上ねらいの被害を低減させるために、「防犯モデル駐車場登録制度」を設置している。駐車場セキュリティシステムの拡充の必要性について、同警察は「統計的に見ると、自動車盗難や車上ねらいは、路上よりも監視者のいない駐車場での盗難が多く、自動車ユーザーのセキュリティ意識も大切だが、これからは駐車場そのもののセキュリティシステムが重要」とWebサイトで告知を行っている。

 防犯モデル駐車場の必要条件として、大阪府警察が挙げているガイドラインは、表2の通りだ。このことから自動車盗難や車上荒らしなどを防ぎ、駐車場のセキュリティを高めるためには、フェンス、照明、防犯カメラが最低限必要であることがわかる。

表2 大阪府防犯モデル駐車場の設備 (出典:大阪府警察Webサイト)
表2 大阪府防犯モデル駐車場の設備 (出典:大阪府警察Webサイト)

セキュリティシステムの採算性

 すべての駐車場に前述のようなセキュリティシステムを完備できれば理想的だろうが、現実には駐車場の規模や形態により、コスト的に難しい場合もあるようだ。駐車場と一口に言っても、企業やマンション、個人宅の敷地内の駐車場、月極の駐車場、都度払いの時間貸し駐車場(コインパーキング)やデパートやショッピングセンターの駐車場など種類を挙げてみると様々あり、それぞれ導入されているセキュリティは異なる。

大山伸善氏 ピー・エス・ディー 代表取締役
ピー・エス・ディー 代表取締役
大山伸善氏

 防犯カメラシステムメーカーであり、施工も行うピー・エス・ディー代表取締役大山伸善氏は、「月極や都度払いの時間貸し駐車場の場合は、コストの都合上、監視カメラを付けないことを希望するオーナーもいる」と語る。同氏によれば、空いている土地を活用するという目的で駐車場経営を行う場合、防犯カメラの設置コストやランニングコストが駐車場売り上げの大部分を占めるようになってしまうと、何のために駐車場経営を行うのかわからなくなってしまうそうだ。

 例えば、駐車料金が20分100円、夜間は1時間100円という料金体系で、稼働率40%とした場合には、1台当たり月額6万4800円の収益になる。5台の駐車場であれば、月額32万4000円となる。地方の場合は、1時間100円という駐車料金ということもあるので、その場合は月額売り上げが10万円程度になる可能性もある。駐車場事業を始めるには、地面をアスファルトで舗装したり、フラップ式機器や精算機などを購入(またはリース)、設置したりする必要があるため、これにセキュリティシステムが加わり、さらに回線費用などがかさむと、その費用を回収できるかが問題となってくる。「監視カメラを付けずに踏み倒されても、1000円程度なら高価な機械を壊されないだけでもマシ」と考える駐車場オーナーが多いという。

 どの程度の規模から監視カメラシステムを設置するかという問いに対して、大山氏は「大きく分けて、フラップ式よりもゲート式の駐車場のほうが、監視カメラを付ける割合が高い」という。フラップ式に比べてゲート式の場合は駐車台数も増えるため、カメラシステムの設置、運営コストも回収しやすい。大規模になれば駐車場内のトラブルも増えるため、カメラは必要になるそうだ。このように、時間貸し駐車場の場合には、駐車場の売り上げと、料金を踏み倒されるリスク、セキュリティシステム費用のバランスが重要になってくる。4、5台という小規模な駐車場であっても安価で導入できるよう、ピー・エス・ディーでは監視カメラパッケージを開発中とのことだ。

 一方、コストを度外視して監視カメラを設置する例もある、企業やマンション、個人の駐車場の場合、当て逃げや10円パンチ(10円玉で車体に傷を付ける行為)などの被害に遭った場合、それが単なる事故やいたずらなのか、恨みによるものなのかを知りたいという要望が多くなるそうだ。大山氏は、「その場合、金額よりも精神的な問題になるので、コストや収益性を考えずに設置するケースが多くなる」と語る。

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