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連載コラム

「ウォークスルー型爆発物探知システム」、羽田空港で初フィールド実験

[ 2009年9月29日 ]

今年度、駅・自動改札機への組み込み実験も<文部科学省/日立製作所>

 「ウォークスルー型爆発物探知システム」フィールド実験模様(左は日立製作所の永野氏)
「ウォークスルー型爆発物探知システム」
フィールド実験模様(左は日立製作所の永野氏)

文部科学省が「19年度安全・安心科学技術プロジェクト」で採択した課題の一つ、日立製作所が開発中の「ウォークスルー型爆発物探知システム」が9月15・16日の両日、東京・羽田空港の保安検査場で実際に手製爆薬などを探知することを想定し、搭乗客の同意を得てデータ収集を行うフィールド実験を初めて行った。今後はデータ分析と検査部改良を行うほか、10月下旬に東京都内で開催される展示会でも入り口で実証実験を披露する。また、今年度は鉄道駅での自動改札機への組み込みを想定した実証実験も想定されており、早期の実用化により、当プロジェクトの趣旨である、社会の安全・安心の向上に寄与することを期待したい。

フィールド実験としては初めてとなった、羽田空港・第1旅客ターミナル・C保安検査場前付近にゲートと検出部で構成する「ウォークスルー型爆発物探知システム」が設置され、フィールド実験が順調に行われたが、同機は小型ながら、手製爆弾に用いられる有機過酸化物の高蒸気圧成分を高スループットで探知できる爆発探知機。さらに、正イオンで検出される手製爆薬と、負イオンで検出される軍用爆薬とを同時に探知できる小型検出部の開発も進めており、高機能&小型化が特徴。テロリストなど爆薬を触った者が当ゲートを通過する際、体に付着した爆薬から出る蒸気を吸引部で採取し、1時間当たり1200人を約2~3秒/人で質量分析(探知)できるという。

今回のデモンストレーションでは爆薬を扱うなどの不審な搭乗客は皆無で、実験趣旨に同意した搭乗客らが気軽、かつ不思議そうにゲートを通過したが、中には通過後「これは何の実験システムですか」とか、「テロリストの撲滅に役立つのであれば、通過するぐらいお安いご用です」といった感想も聞かれた。そして、2日間にわたった実証実験で1日約1000人、計2000人のデータを収集すると共に、探知機能の稼働具合も確認。その際、約1000人で1回、つまり0.1%の誤報率と言うから、驚き。この短時間で正確に探知でき、誤報率も少ないストレスフリーな爆発物探知システムは、世界に誇れる、日本が持つ科学技術の"申し子"と言える。

同プロジェクトはできるだけ早い実用化を目指しており、「今後は誤報を減らす探知ロジックの検討を行いながら改良を重ねるほか、更に小型化も図ります。実際に活用する際は、探知対象を絞り込めるよう、探知基準であるガイドラインを政府等関係機関にお願いしたいです」(永野久志・日立製作所・中央研究所主任研究員)。

また、最終年度にあたる今年度は駅でのICカードで開閉する自動改札機への爆発物探知機の組み込みを想定したシステムを開発し、こちらも実証実験を行う計画。

なお、研究開発を委託した文部科学省科学技術・学術政策局の竹内英・安全安心科学技術企画室長は「聞くところによると、日立製作所が開発した今回の爆発物探知機を含めた一連の爆発物探知機製品は性能が非常に高く、アメリカの関係者からも評価が高いそうです。それだけに、是非、実用化できることに期待します。特に我が国ではセキュリティ向けの対策機器類の多くを海外から導入しているのが現状です。しかし、『メンテナンス面でのタイムリーさやコスト等の面から、純国産のこうした機器が開発・実用化されることを切望している』と、国土交通省の担当者から伺っています。また、日本のセンサー技術は世界でも非常に優れており、そうした技術開発ができる国だけに海外と同等、またはそれ以上の機器開発も夢ではないはずです。コスト・運用面など課題もまだまだあるようですが、一つ一つクリアすることで実用化され、更に(金属探知機等)ほかの探知機との複合化で、搭乗者に対し少しでも(ストレス等の)ハードルを低くする技術に進化することで、当プロジェクトに掲げる、世の中の安全・安心の向上に寄与することを期待します」とエールを送ると共に、文部科学省では来年度も引き続きテロ犯罪対策の技術開発に関する施策を展開していく計画であることも付け加えた。

(2009年9月25日発行号より)

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