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連載コラム

6月から全住宅に火災警報器設置を<インタビュー:椎名大介・消防庁予防課国際規格対策官(併)課長補佐>

[ 2011年6月3日 ]

 住宅火災による死者数の半減を目標に平成16年6月に消防法が改正され、市町村条例による全ての住宅への住宅用火災警報器(以下・住警器)設置義務付けが今年6月に完全施行される。昨年12月時点での全国の推計普及率は『63.6%』で、前回実施時(58.4%)より5.2ポイント進捗したが、残り1ヵ月足らずで全ての住宅への設置普及はどうか。

 そこで、完全義務化を目前に、今後の展開・方針について、椎名大介・消防庁予防課国際規格対策官(併)課長補佐に聞いた。

現状、普及率は6割強、小自治体などは10割も

―昨年12月に実施した住警器の普及率は63.6%でした。

 3分の2程度まで普及しましたが、目標はあくまで100%ですから、道半ばと言えます。地域毎に見ると、小規模な自治体では普及率が既に100%のところもあるほか、消防団や婦人防火クラブ、町内会や自治会といった地域コミュニティと消防本部とが連携して普及を進めているところでは、かなり普及が進んでおり、地区レベルで全ての住戸に住警器が設置された事例も確認されています。

―普及率に差が出るのは自治体の規模が要因と言うことですか。

 まず、義務化の時期が条例により異なるため、普及率に差が出ています。既に義務化が施行されている地域がある一方で、約半分の自治体が平成23年5月末、または6月1日に義務化となります。全体的な傾向としては〝東高西低〟、つまり東側の自治体の方が早い時期から設置義務化を施行しているところが多く、普及率も東日本の平均では65.7%と全国平均より高くなっています。一方で、西日本においても、例えば福岡県では県全体で平成21年に義務化を施行して頂いた結果、県全体で73.2%と比較的高い普及率となっているところです。6月以降の完全義務化に向け、これから義務化となる地域では、地域コミュニティと連携して、イベントの開催やリーフレットの配付などで、住警器を積極的にアピールして頂いており、より一層の普及が見込まれるところです。

―住警器設置が進まないのは、設置に対する罰則がないことも一因では。

 住宅火災における死亡者のうち、逃げ遅れが約6割を占めており、特に65歳以上の高齢者の死亡率が6割を超えています。住警器を設置しないことによる罰則等はありませんが、火災から自分自身や大切な家族の生命、財産を守るためだけでなく、延焼などによって近隣に迷惑を掛ける怖さも認識して頂きたいと思います。住警器が未設置の世帯においては、住警器を設置したことによる奏功事例を紹介していくとともに、地域ぐるみで住警器の設置を根気強く働きかけていくことが重要です。

普及率6割も、死亡率はピーク時比約2割減少に

―日本ではどのくらい住警器の効果が見られていますか。

 日本では現在6割程度の普及率ですが、住宅火災による死者数はピーク時より約2割減少しています。また、住警器を設置した世帯では、設置していない世帯と比べて、火災1件当たりの死者数、被害額や焼失面積が概ね半減しています。アメリカにおいては、住警器の普及率が9割を超えた辺りにおいて、住宅火災による死者数がピーク時の約6,000人から、約3,000人にまで半減しており、イギリスでも住警器の普及率が8割を超えた時点で、死者数はピーク時より4割減少しているところです。

聴覚障がい者対応型住警器を無償給付

―ところで、高齢者や聴覚障がい者などへの火災予防対策も重要です。

 年をとるにつれて、高い音が聞き取りにくくなりますので、住警器を設置する際は、音が大きく、世帯の中で一番年長の方でも音が聞き取りやすいものを選んで頂きたいと思います。また、聴覚障がい者にとっては、音によって警報するタイプの住警器では、火災覚知が極めて困難になります。そこで、平成23年度「元気な日本復活特別枠」として3.2億円の予算を確保し、新たに「聴覚障がい者対応型住警器普及支援事業」を展開することとしています。聴覚障がい者対応型の住警器は、光警報装置を従来の住警器に接続することで、光と音による警報を発するものです。聴覚障がい者が含まれる世帯で、世帯主が生活保護を受給しており、さらに聴覚障がい者対応型の住警器が未設置である世帯に対して、聴覚障がい者対応型の住警器を必要個数分無料で現物配布し、設置も併せて行うこととしています。受付方法や設置方法などのスキームを今後検討し、8月頃には事業者の公募を行い、11月頃から申請窓口を設けて配布を実施していく予定です。

―そのほかの展開は。

 7月頃に開催予定の第6回住警器推進会議において、6月時点の最新の普及率を公表するとともに、義務化後の推進方針、例えば設置後の維持管理等の指導や未設置世帯への設置徹底、住警器の奏功事例を踏まえた日常の防火意識の更なる向上に向けた施策等についても議論される運びです。また、6月時点での住警器の普及状況や効果などを分析した上、新たな「住宅防火対策基本方針(仮称)」をまとめる予定です。住警器の継続的な設置推進に加え、防炎品や消火器の普及、また住宅防火教育などが議論の中心になると思われます。

既存住宅にも統合型住警器の設置を

―メーカーへの要望は。

 住宅用の警報器としては、火災警報器があるほか、CO警報器やガス漏れ警報器などがあり、それらを一つにまとめた統合型の「住宅用火災・ガス・CO警報器」も開発・商品化されていますが、ガス漏れ警報器はコンセント式のものしかなく、既存住宅の場合は、コンセントの位置によっては設置が難しい場合も多いのが現状です。既存住宅でも設置が容易な電池式ガス警報器の開発・商品化、またこれらを統合した、電池式の住宅用火災・ガス・CO警報器の商品化を期待しています。今後、既存住宅も含めて統合型の住警器が普及していくことにより、住宅火災等による被害の更なる低減につながることが期待されます。

(2011年5月25日発行号より)

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