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連載コラム

航空保安の自律的リスク管理を<渡邊良・航空局監理部航空安全推進課課長に聞く>

[ 2010年7月26日 ]

SeMS・BCP等導入 統括責任の明確化も
「人材育成・教育訓練等のあり方」に関する中間報告

 国(国土交通省航空局)では現在、航空検査職員の技術・能力向上を狙った"人材育成・教育訓練等のあり方"に関する調査検討会を開催しており、先に中間報告が公表された。「世界的な航空保安体制の強化においてイニシアティブをとる我が国は、保安検査はもちろん、セキュリティマネジメント(SEMS)やBCP(事業継続計画)なども盛り込んだ航空保安全体を統括する責任者を育成し、また責任体制を明確化するシステムを世界に先駆け導入したい。また、日ASEANの航空保安対策の取り組み強化のためのセミナーを東京で開催する計画」と、渡邊良・航空局監理部航空安全推進課長が開催趣旨を語る。

 そこで、中間報告のポイント、及び航空保安の今後の方向性を渡邊課長に聞いた。

―今回継続開催している検討会の趣旨は。

 航空保安を行う上で、検査機器の技術向上などハード面のほか、なにより大切なのが、現場を担当する『人』=検査員の能力、士気や体制といったソフト面の強化です。3月に東京で開催されたアジア太平洋地域航空保安大臣会合においても、人材開発の重要性が共同宣言に盛り込まれています。他にも、国際的な動きとして、G8ローマ・リヨングループにおいて、航空保安人材の育成に関して我が国がリーダーシップをとり、各国の取り組み(実態)調査に関してイニシアティブをとっているほか、日ASEANの航空保安対策の取り組み強化に向けたセミナー開催(今年は東京での開催を計画)なども積極的に協力してきています。こうした中、航空保安対策を各主体が実践するために、現在の教育訓練は対応できているか。また、航空保安対策を実践するための体制は整っているかといった原点に立った問題意識から、昨年12月に検討会を発足させ、改善策を検討してきました。メンバーは行政や空港管理者・航空会社・航空貨物運送協会などのほか、リスクマネジメント、BCPなどの分野の専門家(4人の有識者)も迎え、航空保安を客観的に評価できる体制としました。そして、これまで6回開催してきた集大成を中間報告の形で公表しましたが、年内に最終報告書を公表します。

―中間報告のポイントは。

 一つ目は、リスクマネジメントの考え方を航空セキュリティにも導入することです。安全面ではこれまで"SMS(セーフティマネジメントシステム)"が義務化されていましたが、航空保安分野には義務化されていません。そこで、保安管理の有効手段として参考となる、"SEMS(保安管理システム)"を現場や全体のマネジメントに組み込み、これまでの単なる法令遵守からリスク(脆弱性)発見や予防対応等、自律的なリスク管理目標の設定・達成を目指します。そのための「ガイドライン」策定に向け23年度に調査を行う計画です。

 二つ目は現状、空港ではビルの入退室などの管理はビル管理会社、保安検査場の管理は航空会社といった、持ち場により航空保安責任者が分かれています。そこで、空港設置者による空港全体のセキュリティを統括する保安責任体制を提示しました。また、外国航空会社等の協議会を、航空保安対策を実施している場合は国の規定に位置付けるほか、RA事業者(特定航空貨物利用運送事業者)に対しては、特定荷主による保安対策の実施の確認も徹底させます。

 三つ目は航空保安業務の受託・実務を行う警備会社において、過去のパフォーマンス評価や教育訓練の実施状況、自主監査も含めた品質管理の考え方を反映して、委託先を決定する仕組みを取り入れ、"品質管理の向上"を目指します。

 四つ目は、年一回国が実施している教育訓練において、今後、対象者を拡大し、各現場の中心となる保安責任者が受講できるようにするとともに、教育訓練の内容も充実させていく必要があると考えています。海外事例では、香港の航空保安アカデミーが年間400コース、フランスでは高等教育訓練機関(ENAC)が年間170コースを開設し、体系化した教育訓練を実施しており、日本も将来に向けて、こうした航空保安の訓練施設設置を検討していきたいと考えております。

 そして、五つ目が、国の監査体制の強化です。地方航空局等も活用しながら航空保安に対する国の監査をより効果的なものにしたいと考えております。

 こうした取り組み全体を通じて、これまでの決められたマニュアル遵守型の航空保安の取組みから、航空保安に携わる主体が自らリスクを発見し、そのリスクに主体的に対応していく取組みに発展していくことを大いに期待しております。

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(2010年7月25日発行号より)

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