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連載コラム

実用化が期待できる研究開発~3年目に目標達成再審査、厳格審査で取り消しも

[ 2010年8月10日 ]

新田浩史 文部科学省科学技術・学術政策局安全 安心科学技術企画室長に聞く

 文部科学省より「平成22年度科学技術振興調整費の審査経緯及び結果概要について」が先に公表された中、安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術について、関係府省庁との連携体制のもと、具体的な現場ニーズに基づいた研究開発テーマを設定し、技術開発及び実用化に向けた実証試験までを一体的に行うプログラムとして、9課題が採択された。そこで、今回、採択された9課題への期待、及びプログラムの今後の方針などを、新田浩史 文部科学省科学技術 学術政策局安全・安心科学技術企画室長に聞いた。

―今年度の応募、及び審査でのトピックスは。

 今年度の募集については、まず、出口側関係機関、たとえば警察庁、国土交通省、空港保安事業者などユーザー側の意向を酌んだ開発目標の明確化を重視し、これを基に当省がテーマ選定・公募を行い、板生清・東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科教授を主査とする12名による有識者委員会で専門的・学術的な見地から判定していただき、採択に至りました。選定の際は、実現を目指す装置等の妥当性、開発要素の妥当性・実現性、個々の開発要素の統合化の実現性を特に重視して審査を行いました。応募総数35件に対して、9件(採択率25.7%)という、狭き門となりました。

 例えば、「人物映像解析による犯罪捜査支援システム」(大阪大学・八木康史教授)、「環境適応型で実用的な人物照合システム」(オムロン株式会社 技術本部 労世紅技術専門職)は、犯罪捜査における様々な場面に対応した人物映像解析による捜査支援システムの実現や、人物画像検索システムの構築が目的で、警察庁や公安調査庁が実用化を期待する技術です。

 また、「自動サンプリング式トレース検出システム」(日立製作所中央研究所 坂入実 主管研究長)は、爆薬のイオン化というトレース検出技術を用いた爆発物探知機能をX線検査装置やセキュリティゲートへ組み込むシステムの開発を目指しており、同じく警察庁や国土交通省が実用化を期待する技術です。

 また、「薬物検知用オンサイト質量分析計の開発」(科学警察研究所 井上博之 法科学第三部化学第一研究室長)は、国内でも社会問題化している覚せい剤、合成麻薬、大麻、コカイン、あへんといった違法薬物を、高性能イオン源を装備した可搬型質量分析計を開発し、5分以内を目標として判定します。

東北大学などが製品化を目指す
ミリ波パッシブイメージング装置
(成田空港)

 更に、「ミリ波パッシブイメージング装置の開発と実用化」(=写真、東北大学 澤谷邦男教授)は、既に開発したミリ波パッシブイメージング装置のさらなる小型化・軽量化、高画質化を図るとともに、既設装置との併設・一体化やハンディー型装置を開発し、最終的に量産化・低コスト化を目指すものです。

 このほか、「化学剤の網羅的迅速検知システムの開発」(科学警察研究所 瀬戸康雄 法化学第三部部付主任研究官)、「ガンマ線による核物質非破壊検知システム」(京都大学 大垣英明教授)、「中赤外電子波長可変レーザーによる遠隔検知」(独立行政法人理化学研究所 和田智之 副主任研究員)、「陽圧式化学防護服の軽量化等」(重松製作所 稲井巡 研究部長)、以上、世界に誇れる国産技術を輩出し、安全・安心な社会構築に貢献するために、実用化が待たれる技術と言えます。

―研究期間は。

 原則5年間(一部テーマは3年間)ですが、3年目(一部2年目)に科学技術振興調整費審査部会において再審査を行い、達成目標(ミッションステートメント)の達成見込みや実証試験の見通し等を審査し、目標に達していないものは研究を打ち切る場合もあります。このように、実用化に大きく重点をおいて研究開発を支援したことが、本プログラムの最大の特長と言えます。

 米国の国土安全保障省のような、政府全体を横断的にまとめた安全・セキュリティ専門機関がない日本において、犯罪・テロ対策を担う各行政機関の要望を最大限反映するプログラムであり、早い時期での実用化が図られることに期待し、また実用化(製品化)できると確信しています。

(2010年8月10日発行号より)

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