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連載コラム

コンテナスキャン15分で終了! 優れた税関ノウハウを次世代に脈々と技術伝承

[ 2010年8月30日 ]

東京税関コンテナ貨物検査センター、視察レポート

 財務省の「21年分貿易総計」によると、日本の輸出総額は54兆1706億円(前年比33.1%減)、輸入総額が51兆4994億円(前年比34.8%減)と、日本は世界屈指の貿易国であり、毎日、世界各国から航空・船便で貨物が輸入されている中、麻薬やけん銃といった社会悪物品や知的財産侵害物品等を水際で阻止するため、全国主要空港・港で税関が活躍している。現在は最新の大型X線検査機器などハイテク機器を駆使し、同時に長年の経験で培った技術をフル動員し、短時間で精密な、世界的に見てもハイレベルな検査を実施している。今回、東京港の輸出入貨物の検査を一手に引き受ける東京税関(東京都江東区青梅2-7-11、広報TEL03-3599-6264)を視察した。

 某日、大田区城南島にある東京税関城南島コンテナ貨物検査センター(東京都大田区城南島5-3-1)を訪れると、構内にはコンテナを積んだトラックが整列している光景が目に飛び込んできた。そして、先頭のトラックは担当官の合図でゆっくりと大型X線検査装置の入口に吸い込まれた。中に入ったトラックは施設の中央付近で大型のX線検査装置に付随したフォークリフトの様な爪で持ち上げられ、所定の場所に移動する(写真)。その後、鉄の扉が閉まり、中でトラックをX線でスキャンする。この間、ドライバーは安全のため、構内に設けられたドライバー控室で待機しており、画像解析が終わると、入り口と反対側(出口)の扉が開き、同じく、フォークリフトの爪の様なものでトラックを所定の位置まで移動し、ドライバーが運転席に乗り込む。この時、もし不審物が発見されていると、開披検査場への移動が指示される。入った時とほぼ同じ速度でトラックが検査場から出庫し、検査は(15分で)終了。想定していたより早い。また、最新の大型X線検査装置による検査のため、(不正の)見逃しはほぼないと言う。この施設を数名の職員で滞りなく検査しているというから、驚き。

 これらコンテナ貨物検査センターの一連の流れを示すと、(1)書類審査を通ったコンテナ貨物を検査場に搬入 (2)コンテナ貨物大型X線検査を受ける。画像解析の段階で異常が発見された場合、 (3)青海に設置している「開披検査場」で実際にコンテナから貨物を取り出し、税関担当官、荷役業者、輸入代理人立ち合いで荷物を開披する。もし、社会悪物品が発見された場合、状態を保存し、摘発 (4)異常がない場合、納税の後輸入が許可される。

 次に、青海に設置されている開披検査場に移動し、実際の開披検査も視察。

 大型X線検査で異常ありと判断された貨物はトラック毎、開披検査場に横付けし、一旦、中の貨物を広い検査場へ取り出し、税関担当官のほか、荷役業者、及び輸入代理人が立ち会って、中身を一つずつ開披。まさに一梱包ごとを丁寧に開け、中身を目視確認する。但し、大型X線検査装置による検査の段階では異常に見えたが、コンテナを開披した段階で、積付状況や型崩れなどが原因等の場合もあり、その時は、開披検査場内に設置された中型のX線検査装置で検査することで判定することもある。

 当日は、アンティーク家具等を詰め込んだ貨物の検査を数名の荷役業者のサポートの下、女性税関職員が無駄な動き一つなく、真剣に検査をしていた。初めて入った記者には、一種独特の張りつめた緊張感を感じた。今度は別のコンテナが開披検査場に横付けされた。中には白い箱包が何百個も積まれており、フォークリフトで一旦、開披検査場中央に降ろした。次に輸入代理人立ち合いの元、荷役業者が梱包を開披すると、中から緑色のスポンジが沢山出てきた。「これは何ですか」と尋ねると、生け花・切り花などを刺すためのスポンジであることが分かった。しかし、大型X線検査装置では、こうした製品が何百個、何千個も一つのコンテナ内に積まれていると、画像解析では判別しにくいのかもしれない。納得すると同時に、輸入貨物にはこうした判別し難い製品も沢山あるため、最後はプロの眼による開披検査が必要なのであると思った。つまり、国内に入ってくるあらゆる輸入貨物を機械(大型X線検査装置)と人間の眼(担当官)が迅速かつ正確に検査することで、安全で安心な経済活動が約束されていることを、改めて認識したのである。

 現場の総責任者である羽生田史郎・監視部検査第1部門統括監視官は「社会悪物品等を密輸入しようとする者は、巧妙な手口で持ち込んできます。以前は、ラタン家具の座面を2重構造に改造し、そこに覚せい剤を隠した事件を摘発しました。大型X線検査では影を捉え、異常ということで2次検査(開披)を行った結果、覚せい剤を発見したものです。

 我々税関職員は国を良くしたいという"使命感・正義感"の強い人の集団であり、社会悪物品の国内流入を阻止する使命感に燃えています。摘発を逃れるのは無理です。職業柄、色々なニュースには敏感であり、特に不正にかかわる事件などは尚更、注目してしまいます。巧妙な手口をあぶりだすのはX線検査装置という日進月歩のハイテク技術があればこそ可能となりましたが、開披検査はやはり"人"が基本です。時代に沿った、いえ一歩先を行く検査技術の習得には日頃の訓練・教育で培っていくしかありません。結果、組織として上司は部下に、先輩は後輩にこうしたソフト面も含めた検査技術の伝承(教育)を大切にしてきています。私は、これまで保税部門など色々な職場を経験していますが、そこから得た情報、技術など全てが現在の職場でもあまねく活かせていると考えています。実際、若手が税関出張所などで活躍するケースも珍しくありません。そうした時は嬉しくもあり、またやりがいを感じます。

 人員を増やせれば、より広範囲な検査が可能となるかもしれませんが、与えられた人員を最大限活用し、的確な検査で安全で安心できる国民生活を保っていくことこそが、我々税関職員に課せられた使命です」と、きっぱり。

 こうしたプロがいればこそ、日本の安全がある。今後とも活躍にエールを送りたい。

(2010年8月25日発行号より)

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