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連載コラム

竹村好史・消防庁予防課国際規格対策官(併)課長補佐インタビュー<総務省消防庁>

[ 2011年1月18日 ]

6月完全施行後も総合的・継続的な取組み推進

 高齢化社会が進展する現在、住宅火災による死者数の半減を目標に平成16年6月に消防法が改正され、市町村条例による全ての住宅への住宅用火災警報器(以下、住警器)設置義務付けが今年6月に完全施行される。昨年6月時点での全国の推計普及率は『58.4%』で、前回実施時(52.0%)より6.4ポイント進捗したが、目標である全ての住宅への設置は難航気味。

 そこで、完全義務化を目前に、今後の展開・方針について、竹村好史・消防庁予防課国際規格対策官(併)課長補佐に聞いた。

『住警器設置推進会議』で決定された重点実施項目を展開

―昨年実施した住警器の普及率は58.4%でした。どう見ますか。

 平成16年に住警器の設置義務化に係る消防法の改正を行い、順次、市町村条例で義務化が進んでいる状況で、完全義務化に向け国・地方レベルでの住警器設置推進に取り組んでいるところです。また、昨年6月時点での全国の推計普及率は『58.4%』でした。更なる普及率の向上を目指し、『住警器設置推進会議』で決定された重点実施項目を中心とした取組の展開が必要です。また消防庁としては共同購入等の先進的ノウハウの普及のためノウハウ集を作成・配布しているほか、シンポジウム開催による各地域の設置推進も支援しています。更に、消火器や防炎品などの普及のほか、住宅防火教育などソフト的な取組・啓発を含む総合的な対策が必要と思われます。

 一方、住警器の普及状況を見ると、特に高齢者世帯や低所得世帯などへ普及が遅れている地域もあると聞いており、こうした世帯への対応強化が必要です。

『普通交付税』等財政措置や奏功事例の広報活動

―どんな対応ですか。

 各市町村レベルでは高齢者世帯等への無料配布や取付支援を展開しているほか、国としては『普通交付税』・『特別交付税』、また平成23年度末まで活用が可能である『緊急雇用創出事業』等の財政措置も用意して地域の取組を支援しています。こうした制度を積極的に活用して頂き、住警器の一層の普及促進に期待します。更に、住警器の効果・奏功事例を活用した情報発信も実施しており、各地域においても同様な広報活動を期待しています。

 因みに、平成19年から21年の3カ年における住宅火災44,085件を元に住警器の設置効果を分析した結果、住宅火災による死者数、焼損床面積、損害額の点で「住警器なし」と比較した場合、「住警器あり」では概ね半減しています。つまり、住警器を設置した場合、火災発生時の死亡リスクや財産損失の拡大リスクが確実に減少するため、各消防本部では具体的な効果や奏功事例を活用した広報活動を積極的に推進して頂きたいと思います。

住宅火災での死者数半減が目標

―アメリカでの住警器設置効果はいかがですか。

 アメリカでは1970年代から各州法による義務化が進んでおり、ピーク時に6,000人を超えた住宅火災による死者数は現在、3,000人を下回っており、住警器の普及に伴い住宅火災での死者数も半減している状況です。

 日本においても全ての住宅における住警器設置による、住宅火災での死者数半減を目標としており、その実現のため各種取組を行っています。因みに、平成17年の1,220人が統計史上最大の死者数でしたが、住警器の普及に伴い、18、19、20年と減少、特に20年の1,123人から21年には1,023人と100人も減少(前年比約1割減)しました。更に普及を進めることで中長期的な減少傾向が期待できます。

―6月時点、及び今年一杯での普及率予測は。

 目標はあくまで100%ですが、既に義務化された地域でも100%達成は少なく、それだけ容易ではありません。地域における婦人(女性)防火クラブや消防団など様々な主体と連携した総力的な取組に期待します。また、2月に開催予定の第5回住警器設置推進会議では更なる普及推進のための方向性が議論される運びです。

―新年度における住警器関連の重点項目は。

 消防庁としては23年度の「元気な日本復活特別枠」予算として、聴覚障がい者対応型の住警器を調達して低所得の聴覚障がい者の住宅に設置するための事業として3億円を予算要求しました。一般的に流通している住警器は聴覚障がい者には覚知不能となります。一方で聴覚障がい者対応型の住警器は価格が5~6倍程度高額等の事情により普及が著しく進んでいない状況です。このため、国において、対象を限定した直接配布を行うこととしたものです。

防炎品普及や教育等も含めた住宅防火の基本方針、策定

―23年度の主な施策は。

 6月時点での住警器の普及状況や効果などを分析した上、新たな「住宅防火対策基本方針(仮称)」をまとめる予定です。住警器の継続的な設置推進に加え、防炎品や消火器の普及、また住宅防火教育などが議論の中心になると思われます。

 また、住宅火災による発火源別死者数のワーストワンは『たばこ』です。そこで、消防機関やたばこ関係者などが参加した「たばこ火災被害の低減対策に関する協議会」を設置し、たばこ火災による被害軽減のあり方に関する協議を進めています。欧米では火がついたまま放置された場合に自己消火するよう改良された「低延焼性たばこ」の製造・販売等の義務化が進んでおり、日本国内でも同様な規制が必要かどうか。更にその火災被害の軽減に関わる注意喚起広報の強化やカーテンなど着火物の防炎規制のあり方などについても議論されています。

―出火原因に着目した取組も推進するわけですね。

 住宅火災での最も多い死亡原因が『逃げ遅れ』で60%を占めるため、「火災による被害」の削減には住警器の設置は最も効果があり、しかも低コストでの効率的な普及が期待できます。しかし、「火災そのもの」の削減のためには発火源や着火物等に着目した取組も当然重要となり、現在対策を検討しています。また地域における火災が起こりにくい環境づくりも大切です。

 いずれにしろ、設置義務化後も住宅防火といった総合的、かつ継続的な取組の枠組みにおいて消防予防行政を推進していくことが求められます。

(2011年1月10日発行号より)

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